経団連の産業競争力強化委員会(進藤孝生委員長、岡藤正広委員長)は4月8日、オンラインで会合を開催し、外国人が多く暮らす全国13市町から成る「外国人集住都市会議」の座長を務める三重県鈴鹿市の末松則子市長から、多文化共生社会の実現に向けた取り組みについて説明を聴くとともに懇談した。説明の概要は次のとおり。
■ 外国人集住都市会議設立の背景
1980年代後半のバブル景気による深刻な労働力不足を背景に、90年に出入国管理及び難民認定法(入管法)が一部改正され、日系2世、3世およびその配偶者が活動制限のない在留資格を取得し、日本で自由に働くことができるようになった。
これを契機に、製造業が盛んな地域において、南米日系人をはじめとする外国人住民が増加した。
外国人集住都市会議は、急激に増える外国人の就労や子どもの教育などの課題を抱える都市が集まり、2001年に設立された。
鈴鹿市は同会議に、設立当初から参画している。
■ 外国人集住都市会議のこれまでの取り組みと企業への要望
同会議設立以降、会員都市の実態や課題を政府に伝えるとともに、あらゆる外国人が活躍できる社会に向けた提言を繰り返し行ってきた。
主な成果として、12年には、外国人登録制度が廃止され、外国人にも住民票が作成された。17年には、海外の日系社会との懸け橋になる日系4世の育成を目的とした制度が創設され、日系4世の在留が一定の条件のもと認められるようになった。
一方で、地方自治体が抱える課題として、(1)適正な労働環境の確保(2)社会保険への加入促進(3)留学生の就職機会の拡大(4)留学生等インターンシップの受け入れ促進(5)外国人労働者の就労場面における日本語教育支援(6)地域における企業の外国人支援と自治体との連携――などが挙げられる。雇用する側の企業にも協力してほしい。
■ 提言「コロナ禍における多文化共生社会の実現に向けて」
20年度は、新型コロナウイルスの感染拡大という予期せぬ未曾有の事態により、多言語による医療機関での情報提供および相談体制の整備などの課題があらためて顕在化した。
緊急事態宣言下で、会員都市が一堂に会する会議は開催できなかったが、現在生じている課題の解決に向けた提案書「コロナ禍における多文化共生社会の実現に向けて」と題した提言を取りまとめた。
外国人政策は、複数の省庁にまたがり、法制度などの縦割りの弊害がいまだ存在する。そのため、外国人受け入れに関する調整を横連携で行う組織「外国人庁」(仮称)の設置について、過去何度も訴えてきているが、今般あらためて政府へ要望を提出することとしている。
【産業政策本部】