経団連は3月23日、全米商工会議所とオンライン懇談会を開催し、同会議所のチャールズ・フリーマンシニア・バイス・プレジデントから、米中デカップリングに対する米国産業界の見解について説明を聴くとともに意見交換した。概要は次のとおり。
■ デカップリング・リスクの高まり
米国企業にとって中国は、魅力的な市場であり、サプライチェーンの一部としても不可欠だが、米国の安全保障を脅かす中国共産党の活動は増加している。政策決定者の間では、経済よりも安全保障への懸念が優先されており、われわれは大国間の競争のはざまに立たされている。バイデン政権は、気候変動等の分野で中国と協力しても、そのために安全保障や貿易問題を犠牲にすることはないだろう。
■ 米中デカップリングのコスト
こうしたなか、全米商工会議所では、今年2月に公表した報告書「Understanding U.S. - China Decoupling」(※)において、米中デカップリングがもたらすコストを試算した。
例えば、米中がお互いに25%の関税を課した場合、米国のGDPは年間1900億ドル減少する。また、半導体業界では、生産高が540億~1240億ドル減少し、10万人の雇用が失われる。完全な米中デカップリングが、米国経済に与えるダメージは甚大なものになると予測される。
■ 米国政府への要望と各国経済界による連携の必要性
安全保障の重要性は理解するものの、米国政府には、経済面への悪影響を最小限にとどめるよう、データに基づいた政策の実施を求めたい。また、安全保障と経済のバランスを取るには、政府全体で議論する必要がある。さらに、米国企業が中国に対して行ってはいけない範囲を定めた「レッドライン」を明確化し、それ以外は自由に活動できるようにすることが求められる。加えて、米国の技術的なリーダーシップを維持するためにも、国内のイノベーションを促進するとともに、各国と連携していくべきである。
全米商工会議所では、同報告書を基にバイデン政権と議論を始めており、前向きな反応を得ている。また、同政権は同盟国との連携にも積極的である。われわれとしても、同盟国である日本やEUの経済界との意見交換を通じて、各国の経済界との間でコンセンサスを形成したい。
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続いて行われた意見交換では、日米経済界がデカップリングに対する見解を共有することで一層連携が必要との意見が出され、フリーマン氏も賛同した。
※Understanding U.S. - China Decoupling
https://www.uschamber.com/report/understanding-us-china-decoupling-macro-trends-and-industry-impacts
【国際経済本部】