経団連1%クラブ(山ノ川実夏座長)は3月10日、会合をオンラインで開催し、Society 5.0 for SDGs時代における企業の社会貢献活動のあり方を検討するため、社会貢献活動の役割や価値などについて討議した。社会貢献活動の重要なパートナーであるNPO・NGOから、社会課題に対する現状認識や企業への期待を聴いた。また、企業3社から取り組み事例について説明を聴くとともにグループ討議を行った。企業からの説明の概要は次のとおり。
■ トヨタ自動車「経営戦略と整合した社会貢献活動」
トヨタは、2015年に「移動が障害でなく可能性であってほしい」というメッセージを発信し、18年には、社会視点で価値を創造するモビリティカンパニーへの転換を発表した。災害支援では、資金寄付だけでなく車両支援も行っている。
20年に車いす使用者が外出先で安心して使える移動型バリアフリートイレ「モバイルトイレ」をLIXILと共同開発した。プロジェクトでは、モバイルトイレを作ることではなく、「トイレを起点に社会を変える」ことをビジョンとした。障がい者の移動の不自由という課題を深掘りするために、現物の調査、現場の人や多様なステークホルダーと協力することで多様な視点を取り入れている。
移動が障害でなく可能性となるためには、技術を進歩させるだけでなく、人やコミュニティーに寄り添うことが重要である。
■ 日本マイクロソフト「グローバルな推進体制と事業領域の環境改善」
マイクロソフトでは、「地球上のすべての個人とすべての組織が、より多くのことを達成できるようにする」というグローバルミッションを掲げている。18年から地球環境のためにAI活用を促進する「AI for Earth」という仕組みがグローバルで展開されている。現在107カ国に701の助成団体があり、多様な知見を持つステークホルダーと交流でき、グローバルなパートナーシップが築かれている点が魅力である。
日本では、子どもの貧困、就職氷河期世代、女性の社会参画、高齢化社会などの特有の社会課題に対してプログラムを実施している。注力分野の1つは就労支援である。新型コロナにより非正規、女性、若者、就職氷河期世代、外国人労働者の雇用への影響が顕著だったことから、認定NPO法人の育て上げネットと連携し、ITスキルアップの支援を通して雇用機会の拡大をねらう。
■ エヌ・ティ・ティデータ「本業との関係と社員のプロボノ」
デジタル技術の活用により、広範な社会課題情報や解決アイデアの高速収集・編集、そしてハイ・インパクトな課題解決が可能となる。NPOやスタートアップに対する助成金、デジタル技術、トライアル機会の無償提供により、後に解決型事業を創出するデジタル・フィランソロピーが始まっている。SDGs(持続可能な開発目標)時代には、社会貢献活動とビジネスを時間軸で統合する思考が求められる。
他方、NPOなどの非営利組織では、ITを活用したくてもノウハウや人材の不足から適切な投資ができないという課題がある。そこで、日本NPOセンター、Code for Japan、ETIC.と連携して、NPOのIT化を推進している。具体的には、NPOの一員としてITの活用・人材育成・投資戦略をアドバイスし実践するSTO(Social Technology Officer)の育成・創出を目指しており、社員もプロボノ参加している。
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グループ討議では、参加者35名が6グループに分かれ、これからの社会貢献活動についてのキャッチフレーズを挙げて、今後の活動予定や社会貢献のあり方などについて意見交換した。
【SDGs本部】