経団連は3月16日、提言「自由で開かれた国際経済秩序の再構築に向けて緊密な協調を求める」を公表した。
■ 多国間主義への転換点の年
新型コロナウイルス感染症の収束をはじめ、グローバルなガバナンスが求められる課題が山積するなかで発足した米国のバイデン政権は、多国間主義に基づく国際協調を重視している。EUは、米国とさまざまな分野で協力を進める方針を明らかにしており、わが国を含め、ポストコロナに向けて国際協調の機運が芽生えつつある。
先月のG7首脳テレビ会議では今年を「多国間主義のための転換点とする」と宣言された。米国主催の気候サミットやG7をはじめとする重要な国際会議が多数予定されており、具体的な成果が期待される今こそ、自由で開かれた国際経済秩序の再構築に向け、各国・地域が緊密に協調することが求められる。その際、まずは日米欧のリーダーシップ発揮を期待する。
■ グローバルなガバナンスが求められる諸課題と協調の方向性
感染症対策
世界全体で感染拡大を食い止め、経済を回復軌道にのせるためには、途上国へのワクチンの供給・分配を進めることが必須となる。また、将来の感染症に備えて、人の移動を確保することが必要である。グリーン成長
2050年カーボンニュートラルの達成に向けて、革新的な技術の開発・普及、それを金融面で後押しするサステナブル・ファイナンスの促進、環境性能に優れた技術の国際展開や、水素、アンモニア、レアメタルなどの確保が求められる。デジタル・ガバナンス
「信頼あるデータの自由な流通」（DFFT）の実現、サイバーセキュリティの確保や国際課税ルールの見直しが必要である。貿易・投資
自由貿易体制の中核を成すWTO改革の推進や公平な競争条件の整備、デジタル貿易の推進、二国間・複数国間の協定の成果を踏まえた国際ルールづくりに向けた取り組みが求められる。インフラ投資
ライフサイクルコストからみた経済性や債務の持続可能性等を満たす質の高いインフラの整備を促進することが重要である。先端技術
開発・実装基盤の強化を図るとともに、機微技術の流出防止の徹底に向けて複数国間で調整することが求められる。
■ 経団連の取り組み
経団連は、B7サミット、B20サミットなどを通じて、また、並行して欧米・アジアの経済団体との対話を深め、連携の輪を世界に広げていくことによって、政府間の取り組みを後押ししていく。
【国際経済本部】