経団連の日本トルコ経済委員会(山西健一郎委員長、斎藤保委員長)は2月10日、日本貿易振興機構(ジェトロ)の佐野充明イスタンブール事務所長とのオンライン懇談会を開催し、トルコにおける新型コロナウイルス感染症をめぐる状況や政治・経済の動向等について説明を聴くとともに意見交換を行った。説明の概要は次のとおり。
■ 新型コロナをめぐる状況
トルコは感染者数上位の国ではあるが、医療崩壊や物資不足のような問題は発生しておらず、政府の感染症対策は、国内から一定の評価を得ている。一方、景気悪化に伴う国内における不満の高まりによって、ナショナリズムの高揚や自国産業保護の動きも顕在化している。
■ 政治・経済情勢
コロナ禍で昨年3月から給与の一部補償や減税措置等の累次の経済支援策を実施している。景気悪化により、世論調査でも「支持政党がない」との回答が増加している。2023年に総選挙を控えるなか、インフレ抑制をはじめとした経済立て直しを図る必要があり、昨年11月には国庫・財務大臣と中央銀行総裁が交代した。トルコでは、外交懸念や金融規制措置のたびに、市場が敏感に反応し通貨安が生じている。新しい財政・金融トップのもと、金融市場の信頼をいかに回復していくかがカギである。
■ 外交関係
米国とトルコは関係の改善と悪化を繰り返してきた。ロシア製ミサイル防衛システム導入をめぐる昨年12月の米国の対トルコ制裁が1年後の再検討でどうなるか注目される。制裁による金融市場への影響も懸念されるが、嫌米世論も根強いなか、米国に現実的な妥協を示すことは困難な可能性もある。
欧州とは、貿易・投資、サプライチェーンなど密接な経済関係がある。東地中海の資源開発をめぐりギリシャが強く反発し、EU内で対トルコ制裁が議論されているが、EUにとってのトルコ市場の重要性から、EUは実効性を伴った厳しい処置に踏み出せないという面もある。
中国は、トルコとの距離感を縮めている。多くの産業が国内外で中国製品と競合するなど、対中感情は良好とはいえない。しかし、米国、欧州、ロシア等と関係が悪化した際に、中国との関係が選択肢の一つになる可能性はある。
■ 日トルコEPAへの期待と第三国協力の可能性
トルコは自国産業保護の観点から、日本を含む経済連携協定のない国からの多くの輸入品に対し追加関税をかけている。パンデミック以降、時限措置を含め5000以上の品目が新たに対象となり、昨年末に過去の分を含め税率が変更された。追加関税問題の解決をはじめとしたFTA締結国との競争条件の確保のため、日トルコEPAの早期締結が不可欠である。
トルコ企業には、ビジネスチャンスがあれば、すぐに現地に赴く迅速さと行動力があり、アジア、中東等第三国における日トルコ企業の連携案件も複数存在している。今後はアフリカなどでの日トルコ企業の連携拡大も期待される。
【国際経済本部】