経団連は1月29日、開発協力推進委員会(安永竜夫委員長、遠藤信博委員長)をオンラインで開催し、木村聡内閣官房副長官補付内閣審議官から、「インフラシステム海外展開戦略2025」(新戦略)の概要について説明を聴くとともに意見交換を行った。説明の概要は次のとおり。
■ 新戦略の概要
政府は、2013年に「インフラシステム輸出戦略」を策定して以降、インフラシステムの海外展開に関する取り組みを官民一体となって推進してきた。同戦略では「2020年に約30兆円」の受注額目標を掲げており、受注実績は18年に約25兆円と増加基調で推移。こうしたなか、近年の環境変化を踏まえ、昨年12月に21年からの5年間を見据えた新戦略を決定した。
新戦略では、(1)カーボンニュートラル、デジタル変革への対応などを通じた、産業競争力の向上による経済成長の実現(2)展開国の社会課題解決・SDGs(持続可能な開発目標)達成への貢献(3)質の高いインフラの海外展開の推進を通じた、「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」の実現等の外交課題への対応――の3つの柱を掲げている。また、「2025年にインフラシステムの受注額34兆円」という新たな成果目標(効果KPI)とともに、戦略遂行上の新たなKPIの枠組み(行動KPI)も設けることとした。
■ 主要な具体的施策
これら3つの柱に基づき、8つの具体的施策の柱を掲げている。
第1は「コロナへの対応の集中的推進」である。中断案件への緊急対応や、公的機関を通じた資金支援、展開国のニーズに応じた医療・保健・衛生分野等の強靱化等を推進する。
第2は「カーボンニュートラルへの貢献」である。2050年カーボンニュートラルの実現に向け、カーボンリサイクルや水素等の技術開発やF/S(フィージビリティスタディ)・実証・ファイナンス等の支援、国際規格の普及等に取り組む。
第3の「デジタル技術・データの活用促進」に関しては、JICAと経団連が共同で作成した「Society 5.0 for SDGs 国際展開のためのデジタル共創」の積極的な訴求や、デジタル経済に関する国際的なルール形成を加速する。
第4の「コアとなる技術の確保」に向けては、プロジェクトにおける重要技術や主導権を確保したうえで現地企業等との協創を図る「Core Japan」を推進する。
第5に、「質高インフラと現地との協創の推進」のため、インフラ開発の上流からの関与強化や現地人材の育成強化等を図る。
第6の「展開地域の経済的繁栄・連結性向上」については、FOIPに資する戦略的案件形成の推進等を図る。
第7に、「売り切りから継続的関与へ」の動きを進め、日本企業の技術とノウハウを活かしたO&M(オペレーション&メンテナンス)とハードを組み合わせた一体的な案件形成を促進する。
第8に、「第三国での外国政府・機関との連携」に向けて、具体的案件における協業を支援する。
これら8つの具体的施策の柱に加え、JICA海外投融資の審査プロセス運用のさらなる見直し・改善や、民間資金と公的資金の連携による支援の強化等も図っていく。
新戦略に基づき、インフラシステムの海外展開に向けた官民一体の取り組みを一層強化したい。
【国際協力本部】