経団連(中西宏明会長)は1月27日、東京・大手町の経団連会館で日本労働組合総連合会(連合、神津里季生会長)との懇談会を開催し、今年の春季労使交渉をめぐる諸問題について意見交換を行った。
冒頭、オンラインで参加した中西会長は、緊急事態宣言により経済活動全般に大きな影響が出ているとしたうえで、「やるべきことは変わっておらず、感染対策を徹底しながら改革を追求していく必要がある。そのため、経営側は旗を振るだけではなく、働き手のエンゲージメントを高めることが重要」と述べ、経営者と労働組合・働き手との関係が非常に大事であるとの認識を示した。また、飛躍的な生産性向上を通じた賃金の適切な引き上げについて、労使による真摯な議論を呼びかけた。
一方、連合の神津会長は、「20年来のデフレや、そのもとでの少子化・人口減少、格差拡大、平均賃金の下落など、コロナ禍に陥る以前から、わが国は危機的状況にある」と指摘したうえで、賃金引き上げのモメンタム維持の必要性を社会全体で共有していくことが不可欠との考え方を示した。
続いて、連合側は「2021春季生活闘争方針」、経団連側は「2021年版経営労働政策特別委員会報告(経労委報告)」を説明し、その後懇談を行った。
連合側から、コロナ禍における雇用安定に向けた喫緊の課題として「雇用のマッチングを中心としたセーフティーネットの整備・拡充」を指摘する発言があった。これに対し経団連側は、「成長産業への労働移動等を促し、経済成長につなげていく取り組みが重要」「リカレント教育や職業訓練のあり方などを見直していくことも不可欠」との考え方を示した。また、連合側から、企業規模間で存在する賃金格差の是正について、取引の適正化やサプライチェーン全体の生産性向上の取り組み推進などを求める意見があった。経団連側は、「意欲的な中小・中堅企業に対して、行政や大企業、地方の大学などが協力し、地域全体やサプライチェーン全体で生産性向上を図っていくことが大切」との見解を示した。
このほか、ジョブ型雇用を検討する前に、働き方に中立な社会保障制度や失業時の生活保障、職業訓練の充実など、社会環境の整備を優先すべきとの連合側の発言に対し、経団連側は、「ポストコロナを見据えて、新しいビジネスを創出する人材の確保や新しい働き方に対応するためにも、ジョブ型雇用の活用が必要」と述べ、労使による検討を呼びかけた。
最後に、神津連合会長は「日ごろからの労使間の切磋琢磨の重要性を再認識した。本質的な議論を継続し、この状況を乗り越えていきたい」と述べた。
中西会長は、「労使の問題意識は共通点が多い。一方、課題解決の難しさも共有できたと思う。しっかりした新しい社会をつくっていくため、春季労使交渉・協議は大事である。労使でしっかりタッグを組んで取り組んでいきたい」と締めくくった。
【労働政策本部】