経団連は1月14日、イノベーション委員会産学官連携推進部会(五十嵐仁一部会長)をオンラインで開催し、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)ロボット・AI部の坂元清志主査から、「NEDO『人工知能技術適用によるスマート社会の実現』の取り組み」をテーマに説明を聴くとともに意見交換を行った。説明の概要は次のとおり。
■ 「人工知能技術適用によるスマート社会の実現」事業について
「人工知能技術適用によるスマート社会の実現」は、2018年度から22年度までの5年間で、人工知能技術戦略で定めた「生産性」「健康、医療・介護」「空間の移動」の重点分野において、人工知能技術の社会実装を推進する研究開発を実施する事業である。研究開発から社会実装まで一元的に取り組み、30年に向けた社会実装のシナリオを策定して、30年時点における物流、運輸、介護・健康・福祉、観光、農林水産および卸売・小売等の分野で人工知能関連産業の新規市場約38兆7000億円の獲得を目指している。
■ 12の実施テーマ
現在、以下の12テーマを実施している。
(1)生産性分野
MyDataに基づく人工知能開発運用プラットフォームの構築
パーソナルデータを本人に集約して、本人利用やデータ利活用等を促進する。データコラボレーション解析による生産性向上を目指した次世代人工知能技術の研究開発
中間表現を用いて元データを共有しないデータ統合解析を実現し、大規模データ分析基盤を確立する。AIによる植物工場等バリューチェーン効率化システムの研究開発
野菜等の需給予測や生育制御により、生産量の不足や廃棄ロスを削減する。農作物におけるスマートフードチェーンの研究開発
青果のバーチャルマーケットを構築し、流通の全体最適化を目指す。
(2)健康、医療・介護分野
人工知能による脳卒中予防システムの開発・実用化
脳動脈瘤破裂リスクの判定等が可能なシステムを構築する。健康長寿を楽しむスマートソサエティ・主体性のあるスキルアップを促進するAIスマートコーチング技術の開発
リハビリ現場での負担軽減等を実現し、次世代ヘルスケア市場開拓を目指す。人工知能支援による分子標的薬創出プラットフォームの研究開発
機能タンパク質を効率的につくるプロセスを開発する。新薬開発を効率化・加速する製剤処方設計AIの開発
AIによる合理的な製剤処方設計を実現し、製剤プロセスの高度化に貢献する。
(3)空間の移動分野
安全・安心の移動のための三次元マップ等の構築
屋内から屋外、屋外から屋内におけるシームレスな地図情報を提供し、スマートな社会基盤と移動に関するサービス事業のエコシステムを実現する。サイバー・フィジカル研究拠点間連携による革新的ドローンAI技術の研究開発
有人地帯での目視外飛行を実現する安心・安全のための技術開発を行う。判断根拠を言語化する人工知能の研究開発
自動運転を対象としたAIの判断根拠の言語化技術を開発する。人工知能を活用した交通信号制御の高度化に関する研究開発
自律分散信号機を開発し、より効率的・円滑的な交通流を実現する。
30年における新規市場獲得を目指し、事業期間中とともに事業終了後も企業の参加を募集している。詳細はNEDOへ連絡いただきたい。
【産業技術本部】