経団連は12月10日、重要労働判例説明会をオンラインで開催し、経営法曹会議所属弁護士の安倍嘉一氏(森・濱田松本法律事務所)から、「同一労働同一賃金に向けた企業実務への留意点─労働契約法20条に関する最高裁判例を踏まえて」をテーマに説明を聴いた。会員企業から約300名が参加した。概要は次のとおり。
■ 同一労働同一賃金の法改正動向
労契法20条は、有期雇用労働者と通常の労働者(無期フルタイム)との間で、職務の内容等の違いに応じ均衡のとれた処遇を求める規定である。法改正によりこの均衡待遇規定はパートタイム・有期労働法8条に引き継がれ、2020年4月に施行された。
■ 近時の最高裁判決と企業のとるべき対応
20年10月、最高裁は各種待遇の不合理性の判断に関する5件の判決を出した。
大阪医科薬科大学事件、メトロコマース事件では、それぞれ正社員と有期雇用労働者の職務の内容等に一定の相違があると事実を認定。そのうえで、正社員としての職務を遂行し得る人材の確保やその定着を図るなどの目的を有する賞与・退職金を、正社員にのみ支給することは不合理でないとした。
日本郵便事件(3件)では各種手当や休暇について判断された。例えば年末年始勤務手当は、世間が休日として過ごしている期間に業務に従事したことへの対価といった性質に鑑み、正社員にのみ支給することは不合理であるとした。また、病気休暇については、生活保障を図り、私傷病の療養に専念させることを通じて、継続的な雇用を確保するという目的を有すると指摘。相応に継続的な勤務が見込まれている有期雇用労働者に対し、日数の相違を設けることはともかく、有給無給の差を設けることは不合理とした。
これらの判決を受け、企業はいま一度、何のために非正規労働者を採用するのかについて確認し、正社員の意義についても再整理したうえで、職務内容等の整理を行わなければならない。また、手当や休暇の整理・見直しにあたっては、各待遇の趣旨に着目し、非正規労働者にも妥当するものではないか確認する必要がある。
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講演後の質疑応答では、多くの参加者が、自社の制度整備に向けた具体的な質問を行った。
【労働法制本部】