
基調講演する中西会長
経団連では10月17日に都内で行われたユーラシア・グループ主催「Gゼロサミット2018」を後援し、中西宏明会長が同社のイアン・ブレマー社長とともに共同議長を務めた。
中西会長は、基調講演を行うとともに、パネル・ディスカッション「激変する国際競争環境~ジオポリティクスとジオテクノロジーのはざまで」に参加した。
ブレマー社長と中西会長の発言のポイントは次のとおり。
■ ブレマー社長:「地政学的不況」を回避すべき
世界はリーダー国不在の「Gゼロ」に直面し、「地政学的後退期」にある。格差拡大や移民増加を背景として、各地で民主主義が破綻を来し、また、自国優先主義が蔓延している。貿易黒字や雇用の争奪に加え、知的財産や技術の覇権をめぐって競合する時代に突入し、特に米中が多国間のルールづくりを忌避する事例が散見される。
この状況が「地政学的不況」に発展し、国際的な安全保障やグローバル経済の枠組みが弱体化し「戦争」となる事態は何としても回避しなければならない。G7・G20サミット等で議論は行われているが、今こそ行動を起こさなければならない。
日本は、「われわれ対彼ら」の対立が起きていない社会であり、移民がもたらす社会への圧力が少なく、紛争への関与もなく、防衛費が増大する状況にはない。また、民主主義がいまだ機能しており、世界のモデルである。Gゼロサミットを日本で開催するに至ったのはこのような理由からである。
■ 中西会長:オールジャパンでSociety 5.0の推進を
日本のリーダーシップのもと、CPTPP(環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定)や日EU EPAが実現に向かっている。また、RCEP(東アジア地域包括的経済連携)も実現を目指している。日本は、これらを活用し、自由で公正な貿易を実現していく大きな責任を担っている。国際的なルール形成は政府だけの問題ではなく、民間としても貢献することが極めて重要である。
加えて、デジタル変革が進むなか、官民協働でSociety 5.0を推進していく必要がある。日本では高齢化等さまざまな課題に直面しているが、IoTやAIなど最先端技術を用いて、良質なデータを活用しながら、それらの解決を目指す必要がある。
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このほか、「ポピュリズム、メディアと国際政治」「Gゼロ時代の国際秩序=その新たな形とグローバル・ビジネスへのインパクト」をめぐってパネルディスカッションが行われた。
また、河野太郎外務大臣が出席し、「激変する世界と日本」と題して講演を行うとともにパネルディスカッション「アジア・太平洋地域における地政学」に参加。「日本は多国間主義を推進する」と述べたほか、世界第3位の経済大国として、国際秩序のなかで「日本はより責任を担う用意がある」と言及した。
【国際経済本部】