経団連のOECD諮問委員会(櫻田謙悟委員長)は13日、東京・大手町の経団連会館でOECDと貿易投資セミナーを共催し、経団連会員企業、OECD、日本政府関係者など約100名が出席した。また、これに先立ち同日午前、経団連の榊原定征会長がアンヘル・グリアOECD事務総長と面会し、日本経済の見通しや成長に向けた政策課題等をめぐり意見交換を行った。
セミナーでは、櫻田委員長の開会あいさつ、グリア事務総長の基調講演に続き、パネル・セッションにてグローバル化の重要性を再確認するとともに、包摂的な貿易投資の実現ならびにグローバル・サプライチェーンの強化に資する政策環境などをめぐり、活発な意見交換が行われた。
■ 開会あいさつ=櫻田委員長
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あいさつする櫻田委員長
グローバル化は世界経済の発展に大きな役割を果たしてきた。保護主義的な傾向が懸念されているが、引き続き、自由な貿易投資は経済の持続的かつ健全な発展に不可欠である。
モノ・サービスの活発な交流は、イノベーションを通じて新規需要や市場を創出し、中小企業も含めたすべての企業に新たなビジネスチャンスをもたらす。この点をわかりやすく説明するとともに、より多くの人々がグローバル化の恩恵を享受できるよう取り組む必要がある。その際、OECDが提供する各種データやファクトに基づく政策提言の数々は大きな助けとなる。
当委員会では、BIAC(The Business and Industry Advisory Committee to the OECD)とも協力しつつ、ビジネスの現場の声を的確にOECDに伝え、その政策に反映させるよう努めていきたい。
■ 基調講演=グリア事務総長
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基調講演を行うグリア事務総長
社会的な格差に対する批判には、機会の平等および結果の平等の両方の側面から応えていく必要がある。人材育成やデジタル分野を含めたインフラ整備によって公平な競争環境(level playing field)を提供すべきである。包摂的な貿易投資の実現には国際的連携の深化が欠かせない。貿易促進により経済成長を実現してきた日本がリーダーシップを発揮することに期待する。
一方で、日本のサービス産業に対する過剰な規制は企業にとってのコストをいたずらに上昇させており、日本ではサービス産業の生産性が製造業よりも低い。この構造的な問題の改善が必要である。
■ パネルディスカッション1
「自由で開かれた貿易投資の実現」
- モデレーター
- ケン・アッシュOECD貿易・農業局長
- パネリスト
- ジュリア・ニールソンOECD貿易・農業局開発課長、アナ・ノヴィックOECD金融企業局投資課長、佐久間総一郎新日鐵住金副社長/BIAC国際投資・企業行動委員会副委員長、小泉勉外務省経済局参事官
世界経済の持続的な成長に向けて貿易投資を促進しつつ、グローバル化から取り残された人々にも目を向け、国内・国際双方で対策を講じる必要があるとの基本認識のもと、「生産性向上、教育・訓練、国際的な競争政策の強化などあらゆる政策の動員が求められる」「保護主義的な政策や措置は決して社会問題の解決にはならない」等の意見が出された。
■ パネルディスカッション2
「グローバル・バリューチェーンの強化に資する政策環境の実現」
- モデレーター
- ケン・アッシュOECD貿易・農業局長
- パネリスト
- ジョン・ドラモンドOECD貿易・農業局サービス貿易課長、神戸司郎ソニー執行役EVP/経団連通商政策委員会企画部会長、飯田博文経済産業省通商政策局通商機構部参事官
信頼性のある投資環境の実現がグローバル・バリューチェーンを構築するうえでの優先課題であり、なかでも重要性を増しているサービス産業の生産性の向上が必要であるとの認識が共有されるとともに、自由な越境データ流通など、デジタル化が進む今日の社会に対応するルールが多国間で合意されることに対する期待が示された。
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パネルディスカッションではグローバル化の重要性を再確認
【国際経済本部】