経団連(榊原定征会長)は14日、提言「Society 5.0実現による日本再興」を公表した。同提言は、Society 5.0の実現が日本再興に向けた最重要戦略であるという認識のもと、実現に必要な具体的な「行動計画」を取りまとめたもの。昨年4月の「新たな経済社会の実現に向けて」、7月の「データ利活用推進のための環境整備を求める」、11月の「Society 5.0実現に向けた政府研究開発投資の拡充を求める」などの提言に続くものである。
■ Society 5.0の位置づけとその世界
Society 5.0は、狩猟社会、農耕社会、工業社会、情報社会に続く第5段階の社会、“超スマート社会”として掲げられ、日本の経済的発展と国内外の社会的課題の解決を両立し、快適で活力に満ちた生活ができる人間中心の社会を目指すものである。
現在の情報社会(Society 4.0)においても、個々のビジネス等の最適化や効率化は進んでいる。Society 5.0の時代にあっては、サイバー空間と現実空間の融合によるさまざまな制約からの解放などを通じ、社会全体の最適化を実現し、複雑化する社会課題の解決と社会や国民の豊かさを実現することが期待されている(図表1参照)。
図表1 Society 5.0の位置づけ
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■ 実現に向けた行動計画
経団連では、Society 5.0がわが国の新しい成長モデルになるとして、その実現に向けた官民のプロジェクトを成長戦略に掲げ推進することを求めている。提言では、5つの視点から、都市、地方、モノ・コト・サービス、インフラ、サイバー空間の5つの領域を選定し、具体的な「行動計画」を取りまとめた(図表2参照)。
都市
官民連携によって都市活動のデジタル化や最適化を進め、快適性・経済性・安全性を兼ね備えた新しい都市の創造を目指す。地方
農業、保育、防災といった地域共通の重点領域で未来の社会基盤づくりを進め、人と自然が共生し、自律的に成長する豊かな地域社会の実現を目指す。モノ・コト・サービス
全体最適化された「モノ・コト・サービス」づくりの基盤を構築し、産業競争力の強化や人々の生活の質向上を目指す。インフラ
建築土木分野を中心にデジタル化を進める「インフラ・インフォマティクス」によって、強靭で持続可能なインフラや国土の形成を目指す。サイバー空間
データ流通基盤やセキュリティ基盤の整備等によって、データの安全・安心・効果的な活用を推進するSociety 5.0実現の基盤構築を目指す。
図表2 実現に向けた行動計画~官民プロジェクトの実行
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■ 必要な施策―5つの壁の突破
Society 5.0の実現に向けて、省庁の壁、法制度の壁、技術の壁、人材の壁、社会受容の壁という5つの壁、さらには産業界自身の壁を突破する必要がある。
例えば、技術の壁の突破には、政府研究開発投資の対GDP比1%を確保し、社会実装までを見通したSIP(戦略的イノベーション創造プログラム)・ImPACT(革新的研究開発推進プログラム)・FIRST(最先端研究開発支援プログラム)型のプロジェクトに新たに2500億円の投資を実行することが必要である。
このほか、社会受容の壁の突破については、国民や海外も含めたすべてのステークホルダーの間で、Society 5.0のコンセプトやそのメリットについて理解を求めていくとともに、各国の文化や地域性にあわせて、課題解決に貢献するかたちで世界展開を図ることを求めている。
また、Society 5.0の実現に向けた産業界の役割は大きい。産業界自身としても、企業間、大学や研究開発法人、ベンチャー企業との協調・共創などオープンイノベーションを進めていく。
経団連では、将来の希望が持てる豊かな社会を目指し、今回示した「行動計画」をはじめ、Society 5.0の実現にかかわる重要な領域において、具体的な活動を進めていく。
【産業技術本部】