経団連の教育問題委員会企画部会(三宅龍哉部会長)は10日、東京・大手町の経団連会館で会合を開催し、実践的な職業教育を行う新たな高等教育機関の創設(図表参照)を答申した中央教育審議会特別部会の委員を務めた永里善彦経団連未来産業・技術委員会産学連携推進部会長、ならびに、中央情報学園の岡本比呂志理事長から、同機関の創設への展望と課題について説明を聞くとともに意見交換した。
■ 大学との差別化
まず、永里部会長が「新たな職業教育機関に対する課題認識の多くは、大学改革に関する議論において従前より指摘されているものであり、まず大学改革を完遂することが新制度創設の前提である」と指摘。そのうえで「既存の大学等の高等教育機関との重複感を避けるため、教育内容・方法や教員資格、学位等に関する差別化を図るべきであり、あわせて、既存の大学等が新制度へスムーズに移行できる仕組みの構築も重要である。その際は、わが国の教育システム全体を俯瞰して、諸外国における成功例等も分析したうえでの議論を期待したい」と述べた。
■ 産業界との連携強化と社会変化への対応
また、永里部会長は「現時点では、どのような職業分野で新たな機関へのニーズがあるかが不明確であり、今後、具体的にニーズがある職種・産業分野を明確にすべきである」と述べ、出口となる産業界との連携強化の必要性を強調した。さらに、社会の国際化への対応として「多くのグローバル企業においては、すでにインド等から優秀なIT人材を積極的に呼び込む取り組みが進んでいる。同機関においては、外国人材への門戸を開くとともに、グローバルな人材獲得競争下に置かれることを見越した教育・研究レベルの確保が重要である」と述べた。
■ 大学体系への位置づけと産業界への期待
続いて岡本理事長は、「新たな教育機関には、停滞している大学改革へ一石を投じる役割も期待している」としたうえで、「同機関は、教養や理論にも裏づけられた実践力を育成するものであること等を踏まえ、大学体系に位置づけ、大学等と同等の評価を得られるようにする必要がある」と指摘。産業界に対しては、教育課程を編成・実施するうえでの連携強化や、インターンシップをはじめとした企業内実習、最先端の業務に携わっている「実務家教員」の学校への派遣などの協力を訴えた。
■ 求められる柔軟性
引き続き行われた意見交換では、「数年で新技術や成長分野が変わる社会に対応した教育体制が取れるのか」との質問に対し、岡本理事長は「学校教育法1条校としての制約はあるが、現在の専門学校と同様に、新しい教育機関でも学科等の変更は柔軟性を持って対応できる体制を期待したい。従来の大学のアカデミズム優先とは一線を画した、企業や社会が求める人材をタイムリーに育成をする教育体制を構築していかなければ意味がない」と答えた。
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【教育・スポーツ推進本部】