経団連の榊原定征会長は7日、東京・大手町の経団連会館で記者会見を行った。
榊原会長は、同日の会長・副会長会議で来年の春季労使交渉に向けた基本方針に関する議論を行ったことに言及。主な意見として、(1)経済の好循環の実現という社会的要請を受け、賃金引き上げモメンタムの維持が必要(2)単年度ベースの賃上げ率に加え、中期的な処遇改善、手当・賞与、ワーク・ライフ・バランス、休暇取得等総合的な議論が行われるべき――を挙げた。過去3年、大企業で2%超、中小企業で1.8%前後の賃上げを続けたが、実体経済や個人消費は上向かないこと、その背景には、賃金上昇分の40%以上が社会保険料負担で減殺されたこと、国民の将来不安や教育費負担などにより給与が増えても消費に十分に回らないことがあると指摘。これに関連し、会長・副会長会議における意見として(3)家計の生活防衛的な消費行動を変えるには、給付型奨学金など政府の総合的な対策が必要(4)企業として消費を促すためにも若年層や子育て世帯への配分を高めるべき――を紹介。これらを踏まえ、経労委で議論を深め、来年1月に経営側の方針を取りまとめたいとした。また、賃上げは、今年の業績が良くないから行わないとの単純な話ではなく、中期的な業績推移のなかで考える必要があると発言。各社が春季労使交渉の場で結論を得るものだが、経団連としても今年、収益が拡大した企業に年収ベースでの賃金引き上げを呼びかけたように、共通の方向性を示していきたいと述べた。
働き方・休み方改革に関連し、社員の過労死は絶対に起こしてはならず、長時間労働の是正に向け経営トップ自らがリーダーシップを発揮し、確実な実現を図ると強調。経団連は引き通き、さまざまな機会を通じて是正を呼びかけるとした。
企業の内部留保について、現金をため込んでいるとの印象を与えるが、そうではなく、利益から税金、配当を差し引いた集積であり、海外投資やM&Aにも活用され、企業の成長につながるものと説明。総額約378兆円中、現預金は200兆円程度で、企業の運転資金の1.5~2カ月分に当たり、決して多すぎるものではない。適正な範囲の運転資金を持つことは当然であり、きちんと理解されるよう、経団連としても継続して取り組んでいくと述べた。
ロシアとの関係について、安倍総理が戦後70余年が経過するなか、平和条約締結に強い意欲を示していることに言及。その実現に向け、世耕ロシア経済分野協力担当大臣が行うさまざまな取り組みが結実し、12月の日ロ首脳会談で歴史的な合意がなされることに期待を示した。
経済界としては、ソチでの日ロ首脳会談で日本政府が提示した8項目の協力プランの実現に積極的に協力していくが、ビジネスライクかつ前向きに対応するのが基本スタンスであると説明。先般、経団連日ロ経済委員会と露日ビジネスカウンシルが今後の協力拡充に関する覚書を締結したことに触れ、二国間経済交流の一層の強化と推進に取り組んでいくと述べた。極東地域はじめ、ロシアには魅力的で有望なビジネスチャンスが存在しており、しっかり分析し、対応していく考えを示した。
【広報本部】