経団連の通商政策委員会企画部会(神戸司郎部会長)は10月11日、東京・大手町の経団連会館で、最近の通商交渉・国際ルール形成の動向に関する会合を開催した。外務省経済局サービス貿易室の林裕二郎室長から「新たなサービス貿易に関する協定」(TiSA、Trade in Services Agreement)交渉について、経済産業省通商政策局通商機構部の飯田博文参事官(総括)から「電子商取引の多国間ルール形成をめぐる動きと環境物品協定」(EGA、 Environmental Goods Agreement)交渉について説明を聞いた。
説明の概要は次のとおり。
■ サービス貿易の自由化・ルール形成
日米EUを含む世界の有志国・地域により2013年に開始された「サービス貿易に関する新たな協定」(TiSA)交渉は現在、世界全体のサービス貿易の7割を占める23カ国・地域(注1)が参加し、年内妥結を目標に交渉中である。全世界のモノの輸出が鈍化するなか、日本のサービス輸出は前年比4%増と堅調であり、電子商取引など新たなビジネスに対応したサービス貿易の自由化は、わが国経済の74%を占めるサービス分野の輸出拡大を通じ、地方・中小企業を含む成長に資する。TiSAはTPP(環太平洋パートナーシップ)協定で合意されたサービス関連のルールを他国に拡大する機会であり、年内妥結に向けて最大限努力したい。
■ 電子商取引の国際ルール形成
世界のデータ取引量が昨年比で40%急増し、企業のグローバルな活動には越境データの移転・流通が不可欠となる一方で、データローカリゼーション(サーバー等のコンピューター関連設備の自国領域内への設置、領域内での情報管理の要求)など、国内規制によりデータの自由な流通を制限する保護主義的な動きがある。こうした状況を踏まえ、TPP協定で合意された(1)自由な情報流通の原則(2)サーバー現地化要求の禁止(3)ソース・コードの開示要求禁止――などの主要な規律について、その対象となる国・地域を広げていくべく交渉にあたっており、今年9月のG20サミットでも、情報の自由な流通の重要性が確認された。
WTOでも途上国を含めデジタル貿易および電子商取引への関心が高まるなか、将来的なルール形成を目指し、電子商取引特別会合において、わが国から先進的な規律案を含む提案を行うとともに、「WTOパブリックフォーラム」においてデジタル貿易をテーマとするセッションを主催するなど、産業界の実情に沿ったかたちでの国際的な議論の醸成に取り組んでいる。
■ 環境物品協定交渉
46カ国・地域で進める環境物品(太陽光パネル、風力発電機、排ガス測定器等)の関税撤廃交渉について、今年9月のG20サミットにおいて、交渉の「着地点」に達したことを歓迎し、年内妥結に向けた努力を倍増させることを確認した。
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これに対し、経団連からは、(1)WTOパブリックフォーラムへの横澤誠氏(経団連インターネット・エコノミー民間作業部会副主査)の登壇(2)ロベルト・アゼベドWTO事務局長が主導するWTOと民間との対話の枠組みにおける政策提言活動への貢献(3)各国産業界が政府・議会関係者等を交えて政策対話を行う「グローバル・サービス・サミット」(主催=米国サービス産業連盟、10月19日、ワシントンDC)への後援・参画やこれに伴う共同声明(注2)の発出――など、最新の国際ルールづくりの推進に向けた経団連の活動を紹介した。
(注1)日本、米国、EU、カナダ、豪州、韓国、香港、台湾、パキスタン、ニュージーランド、イスラエル、トルコ、メキシコ、チリ、コロンビア、ペルー、コスタリカ、パナマ、パラグアイ、ノルウェー、スイス、アイスランド、リヒテンシュタイン
【国際経済本部】