昨年末のCOP21(国連気候変動枠組条約第21回締約国会議)では、京都議定書に代わる新たな気候変動対策の国際枠組みである「パリ協定」が採択され、来月初旬にも発効する見込みとなった。
一方、国内では、今年5月に「地球温暖化対策計画」が閣議決定されたほか、現在、2030年以降の長期の温暖化対策をめぐる議論が行われている。
こうしたなか経団連は18日、「パリ協定を踏まえた今後の地球温暖化対策に関する提言」を取りまとめた。
■ 新たな局面を迎えた地球温暖化対策
パリ協定は、すべての主要排出国が地球温暖化対策に取り組むことを約束する歴史的な国際枠組みである。日本として、パリ協定の詳細なルール策定に貢献することはもとより、環境と経済を両立しつつ、温室効果ガス排出量「2030年度26%減」という中期目標の達成に、国を挙げて取り組む必要がある。
経済界としても、目標達成の柱と位置づけられた「経団連低炭素社会実行計画」を推進し、地球規模の削減に貢献していく。
■ 実効性・国際的公平性が担保された国際枠組みの構築
まず、日本として国際社会における責任を果たしていく観点から、11月初旬にも発効するパリ協定に早期に批准すべきである。
また、パリ協定では、経団連が「環境自主行動計画」や「低炭素社会実行計画」などで培ってきた、「プレッジ&レビュー」の仕組みが採用されたことから、日本の経験や知見を国際的に発信し、パリ協定下での国際レビューに貢献することが求められる。
さらに、各国の地球規模での温暖化対策を促す観点から、国際貢献を通じた削減分の「見える化」や、革新的技術開発での協力、先進国・新興国を問わず幅広く資金拠出を促す仕組みの構築も重要となる。
■ 地球規模の課題解決に向けたわが国の中長期的な取り組み
第1に、わが国としての温暖化対策は、「環境と経済」の両立の視点が不可欠である。温室効果ガスの推進に必要となる革新的技術開発や、既存の設備・インフラの更新を進めるためには、持続的な経済成長を実現し、その原資を確保しなければならない。また、日本の温室効果ガスの約9割はエネルギー起源CO2が占めることから、温暖化対策とエネルギー政策との連携も重要である。
一方、パリ協定では、世界の平均気温上昇を産業革命以前から2℃未満に抑えるといった、世界全体で目指すべき長期の目標が記載されていることから、日本国内の削減のみならず、革新的技術開発や国際貢献に注力することで、地球規模・長期での温室効果ガスの削減に貢献を果たすべきである。
第2に、日本が「約束草案」として国連に登録した、「2030年度26%減」という中期目標の達成に国を挙げて取り組むことが求められる。まずは、目標算定の基礎となった、2030年度のエネルギーミックスを着実に実現するとともに、部門・対策ごとにPDCAサイクルを展開していく必要がある。とりわけ、排出量が過去20年間で約1.5倍に増加している家庭部門については、環境省が責任を持って実効ある国民運動を推進する必要がある。
第3に、2030年以降の長期における、温室効果ガスの大幅な削減は、従来の取り組みの延長線上では不可能であることから、イノベーション創出に向けた環境の整備が求められる。
また、パリ協定が各国に提出を求めている、「長期戦略」の検討にあたっては、エネルギー政策との整合性を踏まえ、実現可能性を考慮しながら、丹念な検討を行うべきである。特定の削減率ありきで、将来の削減の道筋を直線的に描くべきではない。わが国の「地球温暖化対策計画」に記載された「2050年に80%の排出削減を目指す」との長期目標については、わが国の長期のエネルギーミックスの見通しや、経済や雇用、産業競争力などへの影響を検証したうえで、不断に見直す必要がある。
【環境エネルギー本部】