経団連は8月1日、東京・大手町の経団連会館で経済産業省の嶋田隆通商政策局長から、英国のEU離脱をめぐる情勢について説明を聞くとともに意見交換を行った。説明の概要は次のとおり。
■ Brexitの背景には構造的な要因あり
今般の英国民によるEU離脱という選択は、英・EU関係の構造的な課題の帰結だという専門家の意見もある。英国は地理的に欧州大陸と隔てられており、欧州統合の過程においてもユーロ圏やシェンゲン圏に参加していない。加えて、EU経済が力強さを欠き、英国に大量の労働者が流入するなど、英国がEUから得る経済的メリットが低下していることが要因だとの見方がある。
当初、英国の離脱が他のEU加盟国の離脱連鎖の引き金になることを懸念する声があった。しかし実際には、英国の国民投票以降、EU内における離脱気運は落ち着いており、むしろEUへの支持は上昇傾向にあるとの世論調査の結果もある。そもそも中東欧諸国では、GDPに占めるEU資金の割合が高く、離脱は現実的ではないと聞いている。
■ 英・EUの離脱交渉
今後、欧州連合条約(リスボン条約)第50条に基づいて英国の離脱交渉が行われることになるが、その際、「離脱協定交渉」と「新たな通商枠組み交渉」の2つをリンクさせながら進めていくことが想定されている。メイ首相は、EUへの離脱通知は2017年以降としており、英EU間の新たな通商枠組みがどのようなかたちになるのか英国政府も検討中のようだが、既存の枠組みからすると、選択肢は(1)ノルウェー型(EEA)(2)スイス型(3)トルコ型(関税同盟)(4)カナダ型(FTA)(5)WTO協定のみ適用――の5つが想定される。しかし、いずれを採用しても一長一短あり、英EU双方が満足する枠組みの実現は難しいというのが専門家の見解である。
■ 英国のEU離脱に関する政府タスクフォースの設置
こうした状況を踏まえ、日本政府は7月27日に、萩生田光一内閣官房副長官を議長とするタスクフォースを立ち上げた。Brexitの悪影響を低減する観点から、わが国企業や業界団体の要望を整理したうえで、日本政府として英国およびEUへの働きかけの方針を検討中である。
■ 引き続き日EU EPA交渉の年内合意に努力
日EU両首脳はEPA交渉の年内大筋合意を目指すことで一致している。17年は仏大統領選や独連邦議会選挙等を控えていることから、今年末までの大筋合意を実現させるべく努力していく。
【国際経済本部】