経団連のOECD諮問委員会(櫻田謙悟委員長)は1日、東京・大手町の経団連会館で2016年度総会を開催した。委員会の事業報告・事業計画等の報告に先立ち、外務省ならびに経済産業省から、OECDがグローバルなガバナンスに果たす役割や日本政府の最近の取り組みについて説明を聞いた。説明の概要は次のとおり。
■ OECDの概要とグローバル・ガバナンスにおけるその役割
(川瀬和広外務省経済協力開発機構室長)
OECDは、1948年発足の欧州経済協力機構(OEEC)の発展的改組により、持続的経済成長や自由貿易の拡大等を目的として61年に設立された。日本は64年に加盟した。加盟国は当初の20カ国から34カ国に拡大する一方、新興国経済の台頭等により、世界のGDPに占める割合は90年代の8割から近年は6割へと低下している。非加盟国へのアウトリーチ活動を通じて世界経済における有用性を維持しつつ、民主主義・市場経済を核とする「ライクマインド性」で結ばれた先進的な高い水準の取り組みを行う国際機関として、独自性を維持することが課題となっている。
OECDは「世界最大のシンクタンク」と呼ばれるが、グリア事務総長は「ドゥー・タンク」を標榜し、エコノミック・アウトルックの公表等、世界経済の成長に向けた政策提言を行っている。同時にBEPS(税源浸食と利益移転)プロジェクトやコーポレート・ガバナンス原則など、先進的なルールを定める場でもある。経団連には、OECDフォーラムやBIAC(OECDの民間諮問機関)の会合等で、日本経済界の声を積極的に発信してもらうことを期待したい。
■ ルールメイキングとOECDの活用
(柏原恭子経済産業省国際経済課長)
ルールを所与のものととらえるのではなく、能動的に関与していくことが重要となるなか、政府・企業が連携し、課題設定やコンセプト構築などの段階から、製品等の社会課題解決力が適切に評価される国際ルールを積極的に形成し、地球規模の課題解決と市場獲得を同時に実現するようなケースが増えている。こうしたルールメイキングは欧州が得意としているが、日本もOECDやISO等の国際フォーラムを活用して、ルールメイキングを主導していく必要がある。OECDにおけるルールメイキングでは、石炭火力に対する公的輸出信用に関する合意やBEPSプロジェクトが直近の大きな成果である。
今後は、鉄鋼・造船分野等における世界的な過剰供給能力への対処や、デジタル経済の発展に伴い、オープンかつ安全性が確保されたサイバー空間の確立のためのルールメイキングが重要となってくる。諸課題にスピーディーに対応するため、OECDはじめG7/G20、WTO等の場において、官民が連携して取り組みを進めていきたい。
【国際経済本部】