経団連は6日、東京・大手町の経団連会館で常任幹事会を開催し、青森県の三村申吾知事から、「青森県ロジスティクス戦略 青森発!物流改革」と題する講演を聞いた。概要は次のとおり。
■ 津軽海峡の戦略的重要性
青森県は太平洋、日本海、津軽海峡に囲まれ、全方位的に海上アプローチがよい。なかでも津軽海峡は、アジアと北米を結ぶ航路を通るコンテナ船の3割が通過しており(2009年時点)、大きな可能性を秘めている。
また、「北極海航路」を通る船も津軽海峡を通過している。アジアと欧州を結ぶ航路については従来、スエズ運河を経由する「南回り航路」が使われていたが、気候変動の影響で海氷域面積が減少し、夏期に「北極海航路」を使用できるようになった。「北極海航路」は「南回り航路」と比較して、約6割の航行距離であり、海賊リスクも少ない。そのため、アジアと欧州を結ぶ新たな選択肢としての可能性が高まっている。
今後北東アジア(ロシア極東、韓国、中国等)の経済成長により、貨物需要がさらに増大すると想定される。こうしたなか、いかにして津軽海峡を通る船に青森県に立ち寄ってもらうかが課題である。海洋国家として、津軽海峡の戦略的重要性を放っておいてはいけない。
そこで、「青森県ロジスティクス戦略」(2014年1月策定)では、2030年の青森県の将来像として、農水産物、資源などの貨物の積み替えや在庫管理を行うグローバル物流拠点化を掲げている。今後、国を巻き込んだ議論を行っていきたい。
■ 物流改革へのチャレンジ
短期的には、地道なことから始めている。
青森県の食材を新鮮なまま国内外に届けるため、ヤマト運輸と連携して「A!Premium 輸送サービス」を開始した。これにより、日本の人口の約9割の地域に、青森県の新鮮な食材を翌日午前中までに届けられるようになった。また、沖縄国際物流ハブ(那覇空港)を活用することで、アジア各国への最短翌日配送も可能になった。地方から地方へ、そして地方から海外へと青森県の新鮮な食材を販売することで、青森県の経済がよくなっていく。また、これが青森県への観光促進にも結びつく。
第2次産業分野における物流改革にもチャレンジしている。経営資源が不足がちな中小ものづくり企業にとって、仕入れや発送などの物流業務は負担となることが多い。そこで、製造以外を物流事業者に任せることで、ものづくり企業は本業に集中できると考えられる。例えば、メーカーから業務委託を受けた物流事業者が、地方で製品の回収・修理・返送を行っている事例もあることから、県内企業と物流事業者のマッチングを行っていきたいと考えている。
青森県には、さまざまな可能性の種が眠っている。ぜひ皆さまからいろいろなアイデアをいただきたい。日本経済を隅々までよくするためにも、共に頑張っていきたい。
【総務本部】