1. トップ
  2. Action(活動)
  3. 週刊 経団連タイムス
  4. 2016年7月21日 No.3279
  5. 提言「同一労働同一賃金の実現に向けて」を公表

Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2016年7月21日 No.3279 提言「同一労働同一賃金の実現に向けて」を公表

経団連は19日、提言「同一労働同一賃金の実現に向けて」を公表した。提言では、わが国の雇用慣行に留意した同一労働同一賃金のあり方を示すとともに、非正規従業員の待遇改善策を提案している。概要は次のとおり。

■ 日本と欧州の雇用慣行等の違い

政府は、「ニッポン一億総活躍プラン」(6月2日閣議決定)において、同一労働同一賃金の実現に取り組む方針を示した。これを踏まえ現在、有識者の検討会において、欧州の制度を参考に議論が進められている。

わが国と欧州とでは、雇用慣行や賃金制度が大きく異なっている。例えば欧州では、産業別労働協約によって職種・技能に応じた賃金率を決定しており、正規・非正規を問わずに適用される。また採用は、ポストが空いた際に経験者等を対象に行われ、職務限定契約を結ぶことが多い。

他方、わが国では、企業によって賃金制度の内容は多様である。また採用は、新卒一括採用が主流であり、さまざまな職種を経験させキャリアアップを促す社内人材育成システムが確立している。

今後の検討にあたっては、こうした日欧の違いを踏まえ、わが国に適した仕組みを構築することが重要となる。

■ 日本型同一労働同一賃金

欧州では、職務を基軸とする賃金制度等を前提に、職務内容が同一であれば同一の賃金を支払う原則が機能している。しかし、わが国にはこうした基盤はなく、欧州型同一労働同一賃金原則を導入することは困難である。

わが国の多様な賃金制度を踏まえれば、正規従業員と非正規従業員の労働条件の相違が不合理かどうかは、職務内容だけでなく人材活用の仕組み等のさまざまな要素を考慮し、総合判断する現行法(労働契約法、パートタイム労働法)の考え方は維持すべきである。

他方、現行法のもとでは、「正規従業員と非正規従業員の人事賃金制度が異なっているため、非正規従業員が待遇差の理由を理解しづらい」「非正規従業員が司法救済を求めにくい」等の課題が生じている。そこで、課題の解消に向けて、「さまざまな要素を総合的に勘案し、自社にとって同一労働と評価される場合に同じ賃金を支払う」ことを日本型同一労働同一賃金の基本としたうえ、不合理な労働条件が生じないよう、各種の取り組みを進めるべきである。

具体的には、(1)企業が非正規従業員の労働条件について自主点検を行うためのガイドラインの策定(2)フルタイムの有期契約労働者に対する労働契約内容等についての説明措置の充実(3)労働者派遣法における派遣労働者と派遣先労働者の均等・均衡待遇確保のあり方の検討(4)簡易な救済制度の利活用等――に取り組むことが求められる。

■ 非正規従業員の総合的な待遇改善

国民全体の生活水準の向上を図るためには、企業と政府が連携し、非正規従業員の待遇改善に向けた取り組みを推進することも重要となる。

具体的には、企業は非正規従業員の正規化の推進、人材育成施策の充実等に主体的に取り組むことが求められる。政府は、学校教育段階の雇用のミスマッチ対策の拡充や働き方に中立的な税・社会保障制度の実現等を進めるべきである。

※提言の詳細は経団連ウェブサイトに掲載

【労働法制本部】

「2016年7月21日 No.3279」一覧はこちら