経団連は6月27日、東京・大手町の経団連会館で情報通信委員会(内山田竹志委員長、中西宏明委員長、近藤史朗委員長)を開催し、慶應義塾大学環境情報学部の村井純学部長・教授から、データ利活用に関する説明を聞くとともに、意見交換を行った。
説明の概要は次のとおり。
■ 自律・分散・協調
インターネットは基礎技術であるWebの上で発展し、1990年代のインターネット・バブルでビジネス利用が一気に広まった。近年はインターネットの基盤の上でサービスを展開するOTT(Over The Top)が全盛期を迎えており、デバイスから無限に発生するデータの処理が課題となっている。
こうしたなか期待が高まっているのが自律・分散・協調型のシステム(注1)である。各デバイスが自律的にデータを処理し、ネットワークにつながることで全体の性能を上げることができる。私たちが持つスマートフォンは一昔前のスーパーコンピュータ並みの処理能力がある。膨大な量のデータであっても処理できるはずである。
■ IoTサービスプラットフォームの形成
インターネットは分野・組織・国を越えてデータを流通させることができ、さまざまなコラボレーションやイノベーションを生み出す。IoT(Internet of Things)の進展により、あらゆるデータが流通することになり、流通するデータを利活用した新たなサービスが生まれる。そこでサービスプラットフォームの形成とその国際標準化が必要となる。標準化に対して日本の意見を主張し、主導することが重要である。漫画の電子書籍の標準化は日本にしかできない。
ほかにも農業、健康・医療などのIT化が進むことが期待されており、あらゆる分野で標準化が重要となる。インターネット上の日本語や縦書きを国際標準にしてきたが、これまで以上に標準化の動きを注視する必要がある。
■ オープンデータ
内閣官房IT総合戦略本部の電子行政オープンデータ実務者会議の座長として、国と地方公共団体のオープンデータを進めてきた。数年前と比べてかなりオープン化が進み、使い方に制限をかけずに自由に使える「CC―BY」の動きも広がりつつある。この動きを持続させるために産業界がオープンデータを活用することが重要である。
■ デジタルファブリケーション(注2)
オープンソースの3Dプリンタなどを使って、ダウンロードしたデータをもとに、誰もがモノを容易につくれるようになった。新たなものづくりの可能性が広がるが、品質管理、知的財産権、製造物責任などの問題を考えなければならない。
■ 日本の貢献に期待
サービスプラットフォームの形成にあたっては、最新技術の活用、品質と信頼の確保等が重要となる。これらは日本の得意分野である。産業や行政などすべてのステークホルダーが協力しつつ、信頼できる高品質のサービスを提供することで、世界に対して貢献できる。
(注1)自律・分散・協調型のシステム=エッジコンピューティングやフォグコンピューティングなど、クラウドとデバイスの間でデータの分散協調型処理を行う技術
(注2)デジタルファブリケーション=3Dプリンタなどのデジタル工作機械を用いた「ものづくり」のこと
【産業技術本部】