経団連は6月23日、都内で農業活性化委員会企画部会(高橋勝俊部会長)を開催し、九州大学農学研究院副研究院長の福田晋教授から、マーケティング戦略を中心とするわが国農産物の輸出促進策について聞いた。
福田教授の説明の概要は次のとおり。
1.マーケティング戦略
日本の農産物は同質性が高く、差別化が困難であるため、輸出拡大にあたっては、ターゲットとする国・地域および成長を図る戦略品目を決定して集中的に取り組み、他国産からのブランドスイッチを目指すことが重要だ。
また、産地間競争を回避し、わが国農産物全体を「ジャパンブランド」として確立していくには、品目別のプロモーションを行う司令塔が必要だ。そのためには、例えば、農林水産物等輸出促進全国協議会に全権を移行する、あるいは強大な調整力を持たせることも一案であろう。
これまでのわが国のマーケティング・ミックス(製品・価格・プロモーション・チャネルの組み合わせ)は、明確な製品戦略がない、プロモーション主体が脆弱である等、整合性が欠如していた。新規需要開拓に向けて、浸透価格の導入やB級品の投入による製品の多様化、ローカルスーパー等の新規販売チャネルの開拓、現地広告等を活用したプル戦略のプロモーションも組み合わせていくべきである。
なお、プロモーションにあたっては、輸出先に日本文化・食文化を浸透させることに加えて、輸出先の食文化に根差した独自の需要を取り込んでアレンジすることも必要だ。中長期的な観点からは、大きな発信力を持つ日本にいる留学生を活用することが効果的だ。
2.研究開発
こうした課題に対する研究開発の場として、九州・沖縄では、農林水産省事業の一環として、「農林水産物の輸出促進研究開発プラットフォーム」を構築し、課題解決に向けた研究開発に着手している。今後、産学官連携による専門有識者のチームが、マーケティング・品質管理・輸出関連インフラの分野で、産地ニーズ等を踏まえた研究課題に取り組む。例えば輸出関連インフラでは、生鮮品の海上輸送を可能とする鮮度保持技術、多品目混載輸送コンテナの開発等が取り上げられている。
【産業政策本部】