経団連は6月23日、東京・大手町の経団連会館でドイツ航空宇宙センター(DLR)との懇談会を開催した。下村節宏・宇宙開発利用推進委員長が司会を務め、DLRのゲルッド・グルッペ理事から、ドイツの航空宇宙産業について説明を聞くとともに、日独の相互補完的な協力関係の構築に向けて意見交換を行った。同センターとの懇談会は2014年以降毎年行っており、今回は3回目の開催である。
説明の概要は次のとおり。
■ DLRの任務
DLRには2つの任務がある。
1つ目は、研究機関としての任務である。DLRは公的資金で運用されている研究機関であり、約2000人の研究員を含む8000人が勤務している。
2つ目は、ドイツで宇宙政策を所管する機関としての任務である。ドイツ連邦政府の宇宙予算は年間16億ユーロであるが、そのうちの13億ユーロがDLRの予算である。DLRは、(1)実需や利益に則すること(2)持続可能であること(3)国際協力を推進すること――を重視して、ドイツ政府の宇宙計画を策定、実行している。
また、欧州宇宙機関などの国際的な場でドイツを代表して参画するほか、宇宙技術の振興のため、公的資金の使途を決定している。
■ イノベーションの促進に向けた取り組み
DLRでは、宇宙産業のイノベーションを進め新市場を開拓するため、INNO space とコンポーメント・イニシアティブという2つのプロジェクトを推進している。
INNO space は innovation(イノベーション)と space(宇宙)をかけ合わせた造語であり、宇宙産業におけるイノベーションを進めるため、ITや自動車などの他産業と宇宙産業の出会いのプラットフォームをDLRが提供している。宇宙に関するテーマでコンペティションも開催しており、前回は「インダストリー4.0」(注)にちなみ「衛星4.0」をテーマに掲げてアイディアを募集したところ、欧州中から100を超えるアイディアが寄せられた。このうち新たな形態の衛星を提案した、ITが専門の大学教授のアイディアが最優秀賞に輝いた。
また、コンポーメント・イニシアティブとは、宇宙産業の新部品の開発や研究を進める多くの中小企業を支援する取り組みである。宇宙産業での最大の障害は生産能力が足りないことであり、生産技術の開発を支援している。この分野で成功するには、2~3年という宇宙産業としては短いスパンで成果を挙げなければならない。
宇宙分野で、ドイツと日本が協力すれば、相互補完的な関係を築ける。今後、部品づくりの提携から始め、最終的には共同で製品を開発できるとよい。
(注)インダストリー4.0=IoTをはじめ最先端技術を製造業に活用し、工場を起点とした製造業のサプライチェーンや価値創出プロセス全体の革新を目指す、ドイツ政府による取り組み
【産業技術本部】