今回の育介法改正を踏まえ、介護をしながら働く従業員を支援する取り組みを行おうと考えた場合、人事担当者がまず気になることは、どのような支援ニーズがあるかということではないでしょうか。
具体的には、「当社で実際に介護をしている社員はどれくらいいるのか」「介護と一口にいっても、実際にはどんなこと(生活)をしているのだろうか」といったことがわからないと、どのような支援が必要なのかが、みえてきません。実は、これまでこうした「介護実態」を把握しないままに、制度を充実させてきてしまった企業も少なくないのです。その結果、活用されない介護休業制度の長期化などが行われてきました。
今回は、厚生労働省の委託で当社が実施した調査結果をもとに、「働きながら親の介護をする正社員」の介護実態をご紹介します。
◆ 実は多い男性介護者
親の介護をしている人や介護のために仕事を辞めた人というのは、「女性」が多いというイメージがあります。確かに、総務省の「平成24年就業構造基本調査」の結果でみても、過去5年間に介護・看護のために前職を離職した人のうち8割は女性です。一方、皆さんの会社のなかで、親の介護をしている人がどのくらいいるかをみると、実は男性がかなり多いことがわかります。40~50歳代の正社員男女各1000人を対象とした調査では、「親の手助け・介護を担っている」と答えた割合は、男性で14.4%、女性で10.7%とわずかに男性が高くなっています。
多くの日本企業では、40~50歳代の正社員といえば、圧倒的に男性が多い現状ですので、介護を担っている従業員の実数を考えると、かなり男性が多いことになります。しかも、年代的に「管理職層」が多く含まれます。なぜ、この「実態」が重要かというと、中高年の男性管理職はこれまで「長時間働き有給休暇はほとんど取らない」という考え方で勤めてきた人が多く、そのためちょっとした親の手助けや介護であっても、心理的に大きな負担になることを前提に支援をする必要があるためです。
◆ 担っている介護
では、介護をしている人は、どのような役割を担っているのでしょう。「介護」というと入浴やトイレの介助などの「身体介護」を思い浮かべるかもしれませんが、それ以外にもさまざまな介護があります。身体介護や家事、見守りなどを担えば、毎日のように介護時間が必要です。一方で、通院や入退院手続き、介護サービスの手続きや役割調整などは、月に数回程度のかかわりです。どのような役割を担うかという問題は、どのような働き方が必要となるか、に直結する重要な問題です。実際に「正社員として働きながら介護している人」が担っている役割をみると、身体介護は11.3%しか担っていません。その代わり、介護サービスを利用している人が4割弱を占めます(図表参照)。同じデータを、介護を機に離職した人でみると、実は、離職前に介護サービスを利用せず自分で身体介護を担っていた割合が一段と高くなるのです。親の介護を担うのは子として大事なことでしょう。しかし、その担い方はさまざまです。よいサービスを選択し、介護サービス事業者や自分、親族のスケジュールをうまく調整し、しっかりと介護のマネジメントをする、というのも家族としての介護の担い方です。仕事と介護を両立している人は、この「マネジメント役割」に重きを置いている人が、実は多いのです。