わが国の少子化の要因の1つとして未婚化・晩婚化が指摘されており、その対策として、若者に対し将来の人生設計について考える機会を提供することが、有識者等から提案されている。
こうした背景から、経団連は3月29日、東京・大手町の経団連会館で人口問題委員会企画部会(高尾剛正部会長=当時)を開催し、京都府健康福祉部少子化対策課の河島幸一課長と、NTTドコモ人事部ダイバーシティ推進室の本昌子室長から、ライフデザインやキャリアデザインに関する教育や研修の先進事例について、説明を聞くとともに意見交換を行った。
説明の概要は次のとおり。
■ 京都府のライフデザイン事業
京都府の2014年の合計特殊出生率は1.24と、東京に次ぐワースト2位となっている。京都府の有配偶出生率は全国平均以上であるため、未婚化・晩婚化の深刻化が少子化の最大の要因と考えている。
そこで、これまで子育て支援が中心であった京都府の少子化対策を、結婚から妊娠・出産、子育てまでの切れ目のない総合的な施策の展開へとシフトさせることとした。
その一環として、15年度には、若者のライフデザイン事業を創設し、ライフデザイン教育のプログラムを作成するため、府内10大学等の約300名に対し、モデル事業を実施した。
モデル事業では、オリジナルのワークシートを用いて、受講者に将来の結婚・子育てを含めた人生設計を具体的に想像してもらった。実施後のアンケートでは、8割の大学がプログラムを定着させたいと回答し、9割の受講者がこれまで考えてこなかった将来の人生設計について考える機会となったと前向きに評価していた。
また、15年度はプログラムの作成以外にも、身近なロールモデルについて紹介する「生き方ログ」の作成を学生プロジェクトチームと連携して行っている。
今後の展開としては、事業を拡大し、企業の若手社員にも受講してもらいたいと考えている。また、成婚数や出生率に改善がみられるかという効果検証について、把握は困難ではあるものの、追跡調査を行っていきたいと考えているところである。
さらに京都府は、ライフデザイン事業を盛り込んだ京都府少子化対策条例を16年4月から施行し、総合的な取り組みを一層強化する方針である。
■ NTTドコモのダイバーシティ研修
当社では、新たなイノベーションを創出する観点から、ダイバーシティ推進を進めてきた。ただ、06年にダイバーシティ推進室を発足した当初からダイバーシティ=女性という誤った認識があったため、ダイバーシティは経営上の戦略的課題であるという意識を社員一人ひとりが持つような活動へと取り組みの強化を行っている。
現在、ダイバーシティを企業風土に根づかせるため、若手社員向けの早い段階の意識づけを目的として、今年度は300名以上の入社2年目の若手社員全員に対してダイバーシティ研修を新たに実施した。
研修会では、ダイバーシティの正しい認識のほか、キャリアデザインのポイントとして、特に女性社員に初期キャリアの重要性についても理解してもらえるようにプログラムを組んだ。研修を受けた社員のほとんどが、ダイバーシティや価値観の多様性、将来のキャリアをライフとあわせて考えることの重要性、20代でしっかり経験を積むことの意義などについて、理解を深めることができたと回答している。
また研修会のなかで、男性の若手社員も将来は育児に取り組みたいとの意向が強く、共働きが前提となっていることがわかった。30代前半の社員の多くが同様の認識であることから、今後はこうした社員の上司となる管理職層や管理職手前の社員に対するダイバーシティ研修も強化していく必要がある。
【経済政策本部】