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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2016年4月7日 No.3265 シリーズ「地域の活性化策を考える」 -医療機関・介護施設を中心としたまちづくり/川渕孝一・東京医科歯科大学大学院教授/21世紀政策研究所

シリーズ「地域の活性化策を考える」の第6回は、川渕孝一・東京医科歯科大学大学院教授「医療機関・介護施設を中心としたまちづくり」。同氏は、プロジェクト「持続可能な社会保障の構築に向けて―効率化・重点化の視点も踏まえて」の研究主幹を務め、報告書「持続可能な医療・介護システムの再構築」では、(1)地域特性を踏まえた地域医療計画を策定して法的拘束力を持たせるべき(2)地域包括ケアシステムと連動した支払い方式を導入して将来的に高齢者医療と介護保険の統合を目指すべき――と主張している。

◆ 健康寿命と在宅死

近年、超高齢化社会を乗り切るために、(1)健康寿命を延ばすこと(ピンピンコロリ―元気に長生きして病まずにコロリと死ぬこと)と(2)在宅で最期を迎えられることが重要だといわれています。各自治体でも、個々の地域特性に応じて、地域社会・関係機関と連携した住民の健康づくりや、医療・介護分野の連携による在宅医療の推進がスタートしています。いわゆる地域包括ケアシステムの構築が始まっているのです。これは、膨張する社会保障費を抑制しようとするものです。

さらに、第189回通常国会で地域医療連携推進法人制度創設のための法案(医療法の一部改正法案)が成立しました。これは、都道府県知事が、地域の医療機関等を開設する複数の医療法人その他の非営利法人の連携を目的とする一般社団法人を、地域医療連携推進法人として認定して、グループ内で急性期病院、回復期病院、在宅医療機関を適正・充実化させようというものです。これは、社会保障制度改革国民会議のいう「ホールディングカンパニーの枠組みのような法人間の合併や権利の移転等を速やかに行うことができる」スキームです。

◆ ヘルスケアを核にしたまちづくり

こうした流れに対応して、ヘルスケアを核にしたまちづくりを考えてはいかがでしょうか。それは、自宅で最期を看取れるまちづくりであり、医療機関・介護施設の集積です。医療機関等を中心とした人口30万人のコンパクトシティの周りに人口5万人のミニコンパクトシティが点在するというイメージです。

まだ、始まったばかりなので成功例はありませんが、先進事例はいくつか散見されます。例えば、私が座長を務めた日本都市センター「地域包括ケアシステムの成功の鍵」(2015年3月)には、以下の事例が紹介されています。

  • 山形県鶴岡市=南庄内緩和ケア推進協議会、鶴岡地区医師会地域医療連携室、地域包括支援センター、介護保険事業者連絡協議会が相互乗り入れしながら取り組んでおり、特に、ICTを活用して医療・介護の見える化が進んでいる。
  • 千葉県柏市豊四季台団地=東京大学やURとのプロジェクトで、老朽団地をリフォームして、日本版CCRC(継続介護付きリタイアメント・コミュニティ)として、元気な年寄りのまちづくりを行っている。
  • 埼玉県和光市=「長寿あんしんプラン」を策定して、老人病院や特別養護老人ホームはつくらせず、もっぱら民活でケア付住宅を推進している。
  • 福岡県大牟田市=認知症への取り組みが重視され、また、駛馬南校区の住民が、徘徊老人が自由に徘徊できるまちづくりを自主的に行っている。
  • 長野県松本市=「健康寿命延伸都市・松本」を将来都市像として掲げて、医療コーディネーター、地域ケア会議、松本市地域包括ケア協議会を設置している。
  • 神奈川県大和市=「健康創造都市やまと」を将来都市像として掲げて10カ年計画を推進している。

こうしたヘルスケアを核としたまちづくりを進めると同時に、その中心となる医療集積群(クラスター)が国際競争力を高めていくことを期待しています。

【21世紀政策研究所】

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