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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2016年4月7日 No.3265 アジア経済の展望やアジア開発銀行の取り組み聞く -中尾ADB総裁が講演/アジア・大洋州地域委員会

説明する中尾ADB総裁(左)

経団連は3月24日、都内でアジア・大洋州地域委員会(伊藤雅俊委員長、江頭敏明委員長)を開催し、アジア開発銀行(ADB)の中尾武彦総裁からアジア地域の経済展望や今後の発展に必要な政策、ADBの最近の取り組み、日本企業に期待される役割などについて、説明を聞いた。講演の概要は次のとおり。

■ アジア経済の展望

世界金融危機以降も、アジアの途上国は年率6%程度の高い成長率を維持してきた。中国は、確かに、労働人口の減少と賃金上昇、先進国とのギャップの縮小、資源多消費型の投資に偏った成長からより調和の取れた成長を目指す政策などの構造的な変化と、ここ数年間の投資ブームの調整局面があいまって減速している。しかし、インド、バングラデシュ、ベトナム、ミャンマーなどは従来にも増して7~8%と力強く成長している。インドネシアも、資源価格低下の影響を受けながらも、今年は5%を超える成長が見込まれる。

アジアの途上国では、1970~80年代までは、中国やベトナムなど中央計画経済以外の国でも、社会主義的・反植民地主義的な立場から輸入代替的・保護主義的な、あるいは国営企業を中心とする経済政策を運営する傾向が強く、発展を損ねてきた。しかし、その後は、多くの国で開放的で市場重視型の政策が実施されており、それが成長の基盤をつくっている。インドネシアのジョコ・ウィドド大統領やインドのモディ首相にも2回ずつ面会したが、改革への強い意志を感じる。

アジアの国々は中南米、中東、ヨーロッパやアフリカなど他の地域に比して、マクロ経済が安定していることも大きい。経済発展の条件としてこのほかに政治の安定、インフラや教育への投資、政府のガバナンスの改善、治安の安定、周辺国との良好な関係などが挙げられるが、アジア地域ではこうした条件が比較的そろっている。もちろんインフラへの投資はもっと必要だ。

85年のプラザ合意以降、東南アジアに対する日本からの直接投資が増加し、バリューチェーンが構築されたことが地域の成長加速のきっかけとなった。ODAやADBなどを通じた開発支援に加え、民間企業が貿易や投資を通じて、誠実に仕事をしてきたことで日本に対する信用が構築され、同時にアジアの成長に役立ってきたと思う。短期的なむき出しの国益ではなく、アジアの発展と安定こそが日本の繁栄と平和に資するという、相手の立場にも立った長期的な関与の姿勢が各国に評価されていると感じる。

■ ADBの役割

ADBの主な業務はアジア太平洋地域の途上国に対する融資、グラント(無償支援)、技術支援を行うことである。融資には、OCR(Ordinary Capital Resources:通常資本財源)およびADF(Asian Development Fund:アジア開発基金)があり、OCRは中所得国向けに準市場金利による融資を、ADFは低所得国向けに超長期・超低利の融資と無償支援を行う。それぞれに対し、これまで日本は大きな貢献をしている。

ADBの昨年の資金供与承認額は160億ドル以上に上るが、アジアにおけるインフラ整備の需要は膨大であり、各国政府自体の財政資金、内外の民間資金、JICA(国際協力機構)の円借款など各国からのODA、ADBのような開発金融機関を含め、さらなる資金を動員する必要がある。高い関心が寄せられているアジアインフラ投資銀行(AIIB)とは、ADBの有する知見、50年にわたる経験を活用しながら協力していく。ジン総裁とは昨年以来すでに何度も話をし、環境・社会配慮や公平で競争的な調達の重要性についても合意している。

今後ADBは、貸付能力の拡大、新設した官民連携局の強化、セクターやテーマごとの専門性の強化、煩雑すぎる手続きの合理化、29ある各国事務所への権限委譲など、自身の改革を進め、気候変動、災害対策、民間部門促進をはじめ、変容するアジア大洋州地域の課題に対応していく。

日本からの協力もこれまで以上に強化されている。ADBの新設する信託基金にJICAからの15億ドルの出資を受け、これにADB自身の資金も加えて、アジア各国での民間によるインフラ整備を支援する仕組みを新たに設けた。日本は66年の発足時から、他のアジア諸国、米国とともに、ADBを支えてきた。専門職員約1100人のうち、日本人は152人で最も多い。出身は世界銀行、国連機関、民間銀行、JICA、JBIC(国際協力銀行)、農林水産省や国土交通省、電力会社、エンジニアリング会社などで、専門もエコノミスト、エンジニア、弁護士など多岐にわたる。そのうち女性も45人が活躍している。

ADBが実施するプロジェクトにおいては、より先進的な技術をできるだけ取り込んでいくことが必要である。ADBは毎年の新規貸付能力を2014年の130億ドルから20年までに200億ドルに拡大しつつある。それでも各国のインフラ資金需要からみれば限られたものだ。質の高い、先進的なプロジェクトを実施することにより、他のプロジェクトのモデルとなり、開発効果を高めていきたい。そのためには、そうした技術を持つ民間企業の関与が不可欠だ。競争入札時に品質や先進性、メンテナンス費用を含めたライフサイクル全体を通じてのコストなど技術的要素の評価を高めることや、プロジェクトのデザイン段階からスペックの基準を高めに見直すことも検討していきたい。

高い能力と経験を有する専門家の採用についても新たに特別枠を設け、日本、米国、韓国、欧州など先進技術を持つ各国に呼びかけつつある。すでにADBの人事予算局長が経団連で話したとおり、特に、鉄道、水管理、スマートグリッドなどエネルギーの分野では、期限付き雇用、出向も含め専門性のあるスタッフの増強を図りたいので、日本企業にもぜひ協力してほしい。

ADBは霞ヶ関に事務所を持っているので、本日も出席している玉置所長に何かあれば問い合わせてほしい。

【国際協力本部】

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