経団連は2月29日、東京・大手町の経団連会館で資源・エネルギー対策委員会(高橋恭平委員長、加藤泰彦委員長)を開催し、資源エネルギー庁の吉野恭司資源エネルギー政策統括調整官から、エネルギー政策をめぐる諸課題について聞いた。
説明の概要は次のとおり。
(1)再生可能エネルギー=コスト効率的な導入に向け固定価格買取制度(FIT)を見直す
現在の再生可能エネルギー導入は、事業用太陽光発電が9割を占める偏った状態にある。また、買取費用も拡大してきている。このため、太陽光発電については入札制度を導入し、地熱や水力等、リードタイムの長い電源については、導入促進の観点から、数年先の買取価格を示すことにする。
また、認定後長期未稼働となっている案件について、接続契約が進まない場合には認定取り消しを可能とし、後続の事業者に広く門戸を開くとともに国民負担を抑制する。
こうした修正点を盛り込んだFIT特別措置法改正案を今通常国会に提出しており、来年4月の施行を目指している。
(2)火力=コストとCO2抑制のバランスを実現
火力発電についての基本的考え方は、CO2排出量の少ない天然ガスとコストの安い石炭を「長期エネルギー需給見通し(エネルギーミックス)」に掲げられた適切なバランスで活用することである。この目標に向けて、新電力を含む電気事業者は「電気事業低炭素社会協議会」を設立、自主的な取り組みを開始している。
政府としては、事業者の取り組みを後押しするため、省エネ法を通じて発電事業者に石炭火力の高効率化や石炭と天然ガスとの適切なバランスを求めるとともに、エネルギー供給構造高度化法を通じて小売電気事業者にエネルギーミックスと整合する非化石電源調達44%を求めていく。
(3)原子力=社会における信頼醸成が不可欠
東日本大震災後、原子力発電所が稼働を停止したことで、年間2~3兆円の国富が燃料費として海外に流出している。13年度にはエネルギー起源CO2排出量も過去最大となった。こうした課題に鑑みて、エネルギーミックスでは徹底した省エネや再エネの導入等を進めつつも、原子力の電源比率は20~22%必要としている。このため、安全の確認された原子力発電所の着実な再稼働を進める。
原子力の活用には、福島第一原子力発電所事故により失墜した信頼を回復することが欠かせない。政府としては今後、「原子力社会政策」として、(1)事業者による自主的な安全性向上(2)訓練等、防災対策の強化(3)使用済燃料の再処理・最終処分のあり方の策定(4)原子力損害賠償制度の見直し(5)電力自由化で生じる諸課題への対処――等、各種課題への対応を打ち出し、原子力に対する信頼醸成を図っていく。
(4)エネルギー革新戦略=強い経済とCO2抑制の両立
政府は現在「エネルギー革新戦略」の取りまとめを進めている。再エネ・火力に関する施策のほか、中小企業の設備投資や住宅等への省エネ支援、ネガワット取引(注)等新たなエネルギー市場の創設や、水素社会の実現に向けた戦略等を盛り込む予定である。強い経済とCO2抑制の両立を目指し、総合的な政策措置を取っていく。
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講演後の懇談では、再エネ調整電源となる火力の担い手確保、原子力発電所のリプレースや運転期間の60年間への延長等をめぐって、活発な意見交換が行われた。
(注)ネガワット取引=電力会社等との契約に基づいて企業等が節電した分の電気使用量を売買する仕組み
【環境本部】