経団連と九州経済連合会(九経連、麻生泰会長)は3日、宮崎市内で「第68回九州経済懇談会」を開催した。宮崎県での懇談会開催は37年ぶり。
経団連から榊原定征会長をはじめ審議員会議長、副会長らが、九経連からは麻生会長をはじめ会員約150名が参加。「経済再生の確実な実現~九州からの挑戦」を基本テーマに意見交換を行った。会合後のパーティーには、河野俊嗣宮崎県知事が出席し、参加者と懇談した。
開会あいさつで九経連の麻生会長は、「この20年間、世界経済は順調に成長しているのに対し、GDPが横ばいであるのは日本だけである。この現実に危機感を持たなければならない」としたうえで、「九州から日本を動かす」との意志を示すとともに、九経連が取り組んでいる活動を紹介。親の世代が築き上げた安心・安全の日本ブランドがあるからこそ、現在も活動ができているのであり、2016年の現役世代は、次世代に何を残すことができるかを自分たちの責任としてとらえなければならないと強調した。
続いてあいさつした経団連の榊原会長は、アベノミクスにより、デフレ脱却まであと一息であるとの認識を示したうえで、企業こそが日本経済を再生に導く主役であるとの自覚を持ち、経済の好循環実現に向け、デフレマインドからの脱却、設備投資や研究開発投資の拡大、賃金の引き上げなど、経済界としての役割を最大限果たしていかなければならないと強調した。
意見交換
◇ アジアをターゲットとした地域産業の成長産業化
その後、2つのテーマを設定して行われた意見交換では、まず「アジアをターゲットとした地域産業の成長産業化」に関する九経連の問題提起に対し、経団連から(1)農産物の輸出拡大には、省庁および官民連携による輸出戦略の強化や、経済界と農業界が連携した「九州農水産物直販」のような取り組みが重要(荻田伍副会長)(2)九州がアジアを代表する観光地として飛躍を果たすには、訪日外国人のニーズや嗜好へのきめ細やかな対応とともに、九州各県の空港を国際空港として拡充するなど交通インフラの再整備が必要(岩沙弘道審議員会議長)(3)国境を越えた活発な動きをみせるアジア各地を生産拠点などの点としてではなく、多面的・立体的な関係としてみる必要があり、アジアに向けた重要拠点である九州との連携を充実すべき(中西宏明副会長)――と応じた。
◇ 経済再生における「民」の役割と官民連携の促進
また、「経済再生における『民』の役割と官民連携の促進」に関する問題提起に対しては、(1)PPPやPFIを活用した公共施設の整備を、地場企業で対応できるよう取り組むPPP/PFI地域プラットフォームを、福岡を皮切りに各地で普及させることを通じて、経済と財政双方の再生を目指す必要がある(石原邦夫副会長)(2)今次労使交渉・協議では、経済の好循環や経済再生の実現という社会的要請を勘案した積極的な対応が求められており、収益が拡大した企業には、15年を上回る年収ベースの賃金引き上げに向けた検討が望まれる(工藤泰三副会長)(3)地域経済の持続的成長を目指し、九州各県で取り組む産学官連携での人材育成を、一過性で終わらせることなく、腰を据えて進めるとともに、多くの人が地域に集まるよう、さまざまな情報を発信していくことが重要(木村康副会長)――と応じた。
最後に古賀信行副会長が、「本日紹介された九経連の取り組みは具体性があり、非常に心強く感じるとともに、これら取り組みを進めるにあたって阻害要因があればそれを除去すべく、経団連として政策提言活動を展開したい」と締めくくった。
経済懇談会に先立ち一行は、麻生会長をはじめ九経連首脳、JA宮崎経済連の新森雄吾会長、羽田正治前会長と宮崎市内のマンゴー農場を視察。特産の完熟マンゴーの栽培方法等について説明を受けるとともに、視察後の昼食懇談会で農産物の輸出拡大などについて意見交換を行った。
【総務本部】