農業分野における日本との協力関係を強化するため、2月にウクライナ農業政策・食品産業省のヴラディスラヴァ・ルティツィカ次官が来日した。経団連では、官民連携によるウクライナ支援の一環として、2014年8月に茂木敏充経済産業大臣(当時)に同行する経済ミッションをキエフに派遣し、食料安全保障にかかる協力等についてウクライナ政府と討議した経緯がある。
そこで、経団連のウクライナ部会(朝田照男部会長)は2月4日、東京・大手町の経団連会館でウクライナとの農業ビジネスに関心を有する日本企業を対象とした少人数会合を開催し、ウクライナの農業生産をめぐる現状や日本との協力拡充に向けた期待等についてルティツィカ次官から説明を聞いた。説明の概要は次のとおり。
■ ウクライナにおける農業生産の現状
ウクライナは広大で肥沃な黒土と農業生産に適した気候、水資源に恵まれ、「欧州の穀倉地帯」といわれてきた。就労人口の5分の1が農業に従事しており、総輸出の3分の1は農産物である。
輸出先は190カ国に及び、ひまわり油は世界一、とうもろこしと大麦は世界第3位、小麦は世界第6位のシェアを誇る。とりわけ最近3年間で通貨フリヴニャの価値が3分の1に下落したため、輸出競争力が増大しており、中国やインド、欧州、イスラエル等への乳製品や畜産物の輸出など新規市場の開拓も図っている。
一層の農業振興を図る観点から、ウクライナ政府は地方分権や農業関連許認可制度の規制緩和、農地リース制度の簡素化、投資家保護の強化、さらには汚職撲滅など、さまざまな改革に取り組んでいる。
■ 日本との農業協力の拡充に向けて
アジアやアフリカにおける一層の人口増に伴い、世界的な食料需要の長期的な増大が見込まれるなか、ウクライナ政府としては、農業機械の自動運転システム導入による精密生産や肥料の改良、灌がい施設整備など、付加価値の高い農業を実現する施策を推進していく。
また、農水産物全般について日本との貿易拡大を目指す一方、日本からの技術支援を通じて、中小事業者や農業組合の育成を図りたい。
さらに、鉄道や港湾、専用船など農産物関連の物流インフラの整備は欠かせない。オデッサ地方をはじめ南部の農業生産現場に対する日本企業の投資に期待したい。
【国際経済本部】