21世紀政策研究所(榊原定征会長、三浦惺所長)の上杉秋則研究主幹(フレッシュフィールズ・ブルックハウス・デリンガー法律事務所シニアコンサルタント)は1月14日、韓国の梨花女子大学通訳翻訳大学院で、「日本・韓国の経済発展と競争政策」をテーマに、学生に対して講義を行った。
講義では、日本の過去の経済発展と競争政策との関係を振り返るとともに、今後、労働力人口や資本の量的拡大が難しくなるなか、経済成長を達成させるには生産性の向上が不可欠であると述べた。
さらに、生産性の向上には市場での競争が重要であり、市場が機能するような競争政策を実施する必要があることを説明した。韓国経済も日本と同様に労働力人口の減少に直面し、高度成長から中低位成長へと進むなかで日本と同じ問題に直面しており、両国の専門家が共通の課題について議論を行い、それぞれの政策のよい面を互いに吸収しあう関係になることが最善の策であると指摘した。
■ 韓国における競争法審査手続改革に関する調査を同時実施
また、今回の韓国訪問では、同研究所の「独占禁止法審査手続の適正化に向けた課題の研究」の一環として、韓国で現在進められている審査手続の改革案に関して、ヒアリング調査を実施した。
韓国では公正取引委員会が昨年10月21日に「事件処理3.0」という競争法の審査手続の改革案を発表した。改革案は、調査の全過程において弁護人の参加を保障する、問題のある調査公務員に対してペナルティを科すなど、被調査事業者の競争法審査手続における権利を大幅に強化し、調査過程を透明化する内容となっている。韓国では課徴金訴訟での公正取引委員会の敗訴、事件処理の遅延、調査人による威圧的な調査などが問題となっており、法執行の信頼性を確保し、国際的な基準と慣行に合致した先進的な事件処理の体制を整備することを目指している。
今回の調査は、同研究所の独禁法審査手続の改善を検討する研究会での議論の参考とするため、韓国での審査手続の内容や今回の改革案に至るまでの経緯、改革案の詳細などについて、産業研究院、全国経済人連合会、金・張法律事務所、法務法人和有、申榮秀・慶北大学教授に対してヒアリング調査を実施した。
同研究所では、今回の調査結果も踏まえて、今春をめどに研究成果を取りまとめる予定である。
【21世紀政策研究所】