経団連のアメリカ委員会(石原邦夫委員長、村瀬治男委員長)は1月29日、東京・大手町の経団連会館で米国商務省のステファン・セリグ国際貿易担当次官との懇談会を開催した。セリグ次官は「日米経済協力~TPP、そしてその先を見据えて」と題して講演し、日米の「協力によるリーダーシップ」の歴史を3つのフェーズに分けて振り返り、世界の安定と平和を支える新たな経済秩序の構築に向けた期待を表明した。講演の概要は次のとおり。
戦後70年、日米の「協力によるリーダーシップ(cooperative leadership)」は世界の繁栄の原動力となってきた。
第1のフェーズは第二次世界大戦後から1970年代までである。米国の支援による日本経済の再生を通じ共産主義の防波堤となり、GATTケネディラウンドを経て、東京ラウンドで日本は米国とともに交渉主導国の1つとなった。大幅な貿易自由化は70年代の景気後退やオイルショックの緩和にも貢献した。
第2のフェーズとなる70年代末から今日までの間に、両国は世界の2大経済大国となり、相互の経済関係が一層緊密化し、「協力によるリーダーシップ」は一段と高度化した。ウルグアイラウンドで日米は、EU、カナダとともに4極を構成し、世界貿易機関(WTO)創設に主導的役割を果たした。市場経済を支えるWTOは今や世界貿易の98%をカバーするに至り、10億人が極度の貧困から救われた。
第3のフェーズは現在と未来である。対日輸出は米国で64万人の雇用を支え、米国の年間の物品輸出のうち700億ドル、R&Dの70億ドルが在米日系企業によるものである。日本政府には、中小企業の振興、柔軟な労働市場の構築、グローバル人材の育成などの取り組みを期待しており、これらは安倍首相の構造改革とも整合する。日本人留学生への奨学金、インターンシップ機会の拡大など、民間企業の役割も大きい。
日米協力は今、TPP協定の実現において再び求められている。アジア太平洋へのパワーシフト、電子商取引等の新たな課題、オープンな市場の重要性の高まりといった変化の一方で、自由の推進がわれわれの繁栄の根幹にあることはこれまでと変わらない。日米のみならず世界の繁栄を支える新たな経済秩序の実現に向け、経団連とともに、今後も世界の期待に応えたい。
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続く懇談では、米国のTPP協定批准の見通しに関する質問にセリグ次官は、米国議会や市民にTPPの利益を訴えることで批准に向けた手続きが円滑に進むと述べた。
【国際経済本部】