「わが国経済外交のあり方に関する提言」(2015年4月公表)では、中国はじめアジア諸国との関係を改善すべく、経済外交を積極的に展開していく旨うたっている。経団連ではこの一環として、農業分野での日中協力を切り口とした交流の活性化に取り組んできた。
日中首脳会談の再開にみられるように二国間関係が着実に改善に向かうなか、観光を含め双方向の人の移動を促進していく観点から、大都市のみならず地方との草の根交流の裾野を拡大することは重要な課題である。
そこで、経済外交委員会企画部会(清水祥之部会長)は12月8~11日、山東省にミッションを派遣し、日中農業交流・協力シンポジウムや現地視察・懇談会を開催した。概要は次のとおり。
■ 山東省潍坊(いぼう)市(12月8~9日)
日中農業交流・協力シンポジウム
日中双方から100名超の参加者を得て、加工・流通に焦点を当てた中国農産物の高付加価値化の可能性等について議論を行った。また、草の根レベルでの日中間の中長期的な人的交流の拡大に資する方策に関して活発な意見交換を展開し、食品の安全や食文化・観光を含む、多様な分野における日中協力を一層強化していくことの重要性を確認した。
劉曙光・潍坊市長表敬
劉曙光市長から潍坊市の文化や歴史を含む市の概要や経済活動等について説明を受けるとともに、経団連との関係強化に向けた強い意向が表明された。
これに対し、清水部会長は経団連の役割や日中農業・交流シンポジウムの意義、さらに地理的に近接する潍坊市との協力拡大の可能性等への期待を示した。
■ 山東省日照(にっしょう)市(12月10~11日)
劉星泰・日照市長表敬
劉星泰市長から日照市の歴史や生態系など優れた観光資源、地政学的な重要性に裏づけられた外資誘致策等について説明があった。また、経団連や日本企業との関係の緊密化に向けた意欲が示された。
これに対し、清水部会長から日照市の魅力や熊波副市長(前中国外交部アジア局副局長)とのこれまでの交流を通じた絆、双方向の人の移動拡大の可能性等を説明した。
現地視察
日照都市企画展覧館やオリンピック水上公園(08年北京五輪水上競技開催地)、日照空港(15年12月開港)、日照港、莒(きょ)県浮来山樹齢4000年の銀杏の木ほか、生態系に配慮した多様な観光資源を視察した。
また、環太平洋経済圏、黄海経済圏、さらには新ユーラシア・ランドブリッジ経済ベルトの結節点に位置する日照市が「一帯一路」戦略の要衝にあり、人的交流や物流の観点から中国の持続的発展の拠点として期待されている現状を把握した。
■ 主な成果と今後の取り組み
今次ミッションでは、中国日本友好協会幹部や潍坊・日照両市幹部をはじめ、日中関係のカギを握る要人とのネットワークを強化することができた。
経団連としては、日中間の草の根経済外交を一層推進するとともに、その他のアジア諸国等についても、政策対話ミッションを派遣していく。
【国際経済本部、国際協力本部】