経団連は11月27日、東京・大手町の経団連会館で教育問題委員会企画部会(三宅龍哉部会長)を開催した。前三鷹市教育委員長の貝ノ瀬滋氏からコミュニティ・スクールにおける新しい学校運営のあり方について、また、元杉並区立和田中学校校長で教育改革実践家の藤原和博氏から、学校経営のあり方とこれからの時代の教員に求められる素質・能力等について説明を聞き、懇談した。
■ コミュニティ・スクール(学校運営協議会制度)による学校運営
貝ノ瀬氏はまず、「コミュニティ・スクールとは市町村の教育委員会の指定により、保護者や地域の代表から成る『学校運営協議会』を設置している学校のことであり、現在、全体の7%程度にあたる全国の小中高合わせて2389校が指定を受けている。学校運営協議会は、教育委員会や校長に対して学校運営に関する意見を出したり、教職員の任用について教育委員会に意見を出したりする等の役割を担っている」と説明した。
また、「コミュニティ・スクールの導入により、地域と学校との連携強化、地域の活性化、教職員の意識改革、いじめ・暴力などの生徒指導の課題解決、学力向上などに成果が上がっている」と紹介したうえで、「コミュニティ・スクールをさらに広げていくためには、子どものよりよい育成のために必要だとの認識を教員の間で広げ、学校側の抵抗感をなくしていくことが大切だ」と指摘した。
■ 学校経営のあり方と教員に求められる資質・能力
続いて藤原氏が講演し、「わが国は、1997・98年を境に“みんな一緒”の20世紀型成長社会から“個人別”の21世紀型成熟社会に移行した。前者では正解を速く正確に導く“情報処理力”が重要だったが、後者では他者と協働して企業や顧客が納得する解をつくり出す“情報編集力”が重要となっている」と述べたうえで、「他方、教育の内容は変化していない。情報処理力、情報編集力を鍛える教育をそれぞれ7対3程度の比重に変えていく必要がある」と強調した。また、教育界の問題として、(1)今後10年でベテラン教員が大量退職する一方で、採用倍率の低下により若手教員の質が低下する(2)経済格差により成績のよい子・悪い子が二極化しており、一斉授業はどちらにも的外れな内容になっている――ことを指摘。これらの課題に対しては“チーム学校(注)”により外部専門スタッフとの連携を強化し、教員はアクティブ・ラーニング等の情報編集力の教育に集中し、知識を習得させる教育はシステム化(ICT化)する等の解決策を示した。
(注)チーム学校=教員が子どもへの教育に専念できるよう、スクールカウンセラー、部活動の指導者など多様な専門性を持つスタッフを学校に配置すること
【教育・スポーツ推進本部】