経団連の社会基盤強化委員会企画部会(伊東祐次部会長)は10月23日、東京・大手町の経団連会館で会合を開催し、加藤久喜内閣府政策統括官(防災)から、首都直下地震等の災害時における政府の対策の現状と課題について説明を聞くとともに、意見交換を行った。説明の概要は次のとおり。
(1)首都直下地震対策の現状と課題
関東周辺は、さまざまな大陸・海洋プレートに囲まれており、周期的に大規模地震に見舞われてきた。政府では、今後30年間に約70%の確率で発生すると見込まれるマグニチュード7クラスの「都区部直下地震」を防災対策の主眼と位置づけ、被害想定の試算や各種対策を行っている。
仮に、現在の災害対策のもとで都心南部に「都区部直下地震」が発生した場合、被害総額は約95兆円、最大死傷者は約14万6000人と見積もられている。このため、政府では、建築物の耐震化率や出火防止対策となる感震ブレーカーの設置率等の向上に向け、新たに数値目標等を設定し、「首都直下地震緊急対策推進基本計画」のなかに位置づけた。この目標が達成された場合、人的・経済的被害は半減すると考えられており、今後目標の早期達成に取り組んでいく。
(2)そのほかに想定される各種災害
首都直下地震に加え、政府では、南海トラフ地震や大規模水害等への災害対策も進めている。南海トラフ地震では、巨大津波の発生等により、広域かつ多数の人的・物的被害が予想されており、救援物資も大量に必要になる。しかし、被災自治体のみで必要な物資の備蓄や迅速な調達は困難であるため、民間企業の協力が不可欠となる。
また、主な大規模水害として、利根川や荒川の氾濫、東京湾の高潮等が想定される。特に、荒川が氾濫した場合の想定浸水区域には、千代田区も含まれており、企業の中枢機能に甚大な影響を与える可能性がある。オフィスビルに止水板を設置するといった企業の浸水対策が求められる。
(3)民間企業に期待する事項
災害時の官民連携の強化のため、民間企業にも平時からさまざまな防災・減災対策に取り組んでほしい。特に、企業間、地域等と連動したBCP(事業継続計画)の策定、実効性のあるBCM(事業継続マネジメント)の実施が緊要である。
また、災害時には、各社が保有するリソースや情報を共有することで、より迅速な応急対策や企業の事業継続が可能となる。多数の企業が参加する情報共有基盤の構築を検討してほしい。
政府では今年9月に、経団連を含む各界各層の団体の長を構成員とする「防災推進国民会議」を立ち上げ、津波を含む各種災害への防災意識の向上を図っている。経団連にも引き続き、防災・減災に向けた普及・啓発の協力をお願いしたい。
【政治・社会本部】