経団連は20日、提言「企業の競争力強化と豊かな生活を支える物流のあり方」を公表した。同提言は、企業各社による物流効率化への取り組み事例を紹介するとともに、企業の競争力強化と豊かな国民生活の実現に向けて、国内物流を中心に官民連携で取り組むべき課題に対する経済界の意見を提示し、各社の事業展開や社会における物流の重要性をあらためて訴えている。
国土交通省の社会資本整備審議会および交通政策審議会が年内に予定している、今後の物流政策の基本的な方向性に関する答申への意見反映を目指し、取りまとめた。
■ 物流の重要性と直面する課題
物流は、発・着荷主、物流事業者、複数の所管官庁等、多数の関係者による非常に複雑なプロセスであるとともに、企業活動や人々の生活に欠かすことができない。
他方で、近年は担い手の高齢化や人材不足の深刻化をはじめ、物流を取り巻く外部環境の大幅な変化が、物流事業者の経営環境をますます厳しくしている。本格的な人口減少・高齢化社会のもとで物流が新たな産業構造に適切かつ迅速な対応を取らなければ、物流業界のみならず、わが国産業全体の競争力を弱体化させてしまう。
■ 各社の物流効率化への取り組みの現状
担い手の確保育成には、サプライチェーン全体として、各主体の連携のもと、省人化・省力化による作業の見直し、負担の軽減が不可欠である。積載率効率の向上、荷主間連携によるリードタイムの変更、輸送ルートの見直し、工場直送の拡大、倉庫内作業の自動化・ICT化・ロボット化等、物流事業者やメーカー各社が物流効率化に向けた取り組みを強化している。
■ 目指すべき物流
新たな事業が日々生み出されるなか、物流事業者が、取引先や消費者のニーズ等、時代の変化への対応力の強化に重点を置く従来の経営姿勢にとどまることなく、荷主・消費者をはじめ、広く社会に積極的に提案する革新力を獲得することが重要である。
物流自らが、時代への対応のみならず、官民との連携によって「未来を創る」事業を展開するためには、(1)官民一体による競争基盤としての物流の再構築(2)収益性のある物流の確立(3)産業構造の高度化を支える物流への変革――に同時に取り組む必要がある。
(1)では、「行政が主体となって取り組むべきもの」と「企業間・業界間の連携によって取り組むべきもの」に挙げた諸課題について、関係者によるさらなる取り組みが求められる。(2)については、契約書面化の徹底、輸送と付帯作業(荷役、検品等)の区分の明確化などが、また(3)では、物流部門がサプライチェーン全体最適の実現を目指すトータルコーディネーターとして活躍できるよう、官民一体となって物流にかかるデータ活用方法の標準化や物流におけるICT投資への支援が重要である。加えて、広く社会において物流への理解増進を図ることが必要である。
※詳細は経団連ウェブサイトに掲載
【産業政策本部】