現在、内閣府の総合科学技術・イノベーション会議(CSTI)のもとで、2016年度から5年間のわが国の科学技術イノベーション政策の基本的な方向性を定める「第5期科学技術基本計画」の策定に向けた検討が進められている。昨年来の検討の進捗状況にあわせ、経団連(榊原定征会長)ではこれまで2度にわたって提言(注1)を行ってきた。6月には「中間取りまとめ」が公表され、その内容は経団連の主張と概ね一致しているが、一部踏み込み不足の点が見受けられた。
こうしたなか、年内の答申案取りまとめに向け、研究開発推進プログラムの恒久化や政府研究開発投資の数値目標の明記とその着実な実現など、経団連として特に重視する点を緊急的に取りまとめ、20日に「第5期科学技術基本計画の策定に向けた緊急提言」として公表した。
■ 未来の産業創造と経済・社会的課題への対応
第5期計画に盛り込まれる予定の「未来の産業創造と社会変革」「経済・社会的課題への対応」について、わが国の将来にとって、極めて重要な内容として高く評価している。それらの実現に向け、政府として、ImPACT(革新的研究開発推進プログラム)、SIP(戦略的イノベーション創造プログラム)といった研究開発推進プログラムの制度としての恒久化を図るべきである。
あわせて、ICTの飛躍的発展が経済社会に大きな変革をもたらす可能性が指摘されるなか、ソフトウエアの開発を含め、システムの高度化・統合化の基盤となる共通プラットフォームの構築や将来のビジネスを見据えた法制度整備も極めて重要となる。
■ 政府研究開発投資目標の明記
諸外国が科学技術イノベーション政策を強化し、政府の研究開発投資を増額させるなか、わが国の科学技術予算の伸びは低調であり、「中間取りまとめ」においても、政府の投資目標について「検討」との表現にとどまっていた。科学技術予算は未来への投資として重要であるとの認識のもと、従来の計画で掲げた「政府研究開発投資の対GDP比1%」という数値目標(注2)を第5期計画でも明記し、着実な実現に努めることが極めて重要である(図表参照)。
■ 女性の活躍促進
理工系分野における女性の活躍推進が強く求められるなか、文部科学省・経済産業省共管の「理工系人材育成に関する産学官円卓会議」や内閣府での検討を踏まえた具体的施策の充実を期待する。
■ PDCAサイクル実行に向けた指標作成
基本計画の推進にあたっては、かねてからの課題であったPDCAサイクルの実行に向け、俯瞰的かつ検証可能な指標を作成し、指標によっては、CSTIにおいて長期的に成果を見極めるべきである。
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産業界では、経団連ビジョン「『豊かで活力ある日本』の再生」で掲げた、次の時代を担う「新たな基幹産業の育成」に向け、本格的なオープンイノベーションを推進するとともに、非競争領域を中心に複数の企業、大学、研究機関等と連携し、革新的技術の創出に取り組む。
(注1)2014年11月に「第5期科学技術基本計画の策定に向けて」、15年3月に「未来創造に資する『科学技術イノベーション基本計画』への進化を求める」を発表
(注2)提言では、安倍政権が掲げる「2020年度名目GDP600兆円達成」目標を前提に第5期期間中の投資総額を約28兆円と計算
※詳細は経団連ウェブサイトに掲載
【産業技術本部】