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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2015年10月15日 No.3242 第15回「経団連 Power UP カレッジ」 -「伝える力」「聞く力」/東京ガスの岡本会長が講演

経団連事業サービス(榊原定征会長)は9月9日、東京・大手町の経団連会館で第15回「経団連 Power UP カレッジ」を開催し、東京ガスの岡本毅会長から講演を聞いた。
講演の概要は次のとおり。

■ 正しく伝えることの難しさ

「伝える力」「聞く力」は、組織運営に不可欠であり、基本中の基本である。しかし現実には、正しく伝え、正しく聞くということは決して容易ではない。まず、東日本大震災時の私の経験から話したい。当社では、発災後直ちに管内の被害把握とその対応、近隣事業者や東北地方への支援に社員は不眠不休で対応した。福島第一原子力発電所の事故など大規模被害の状況が徐々に明らかになるなか、私は、電力対抗の営業活動において、決してネガティブキャンペーンはするなと指示した。当時は、オール電化との厳しいエネルギー競争の最中であり、ガス業界は劣勢にあった。こうしたなか、営業部門に対し、エネルギー事業者としてガスのメリットや強みを顧客にアピールするのはよいが、原子力発電所事故や原子力問題をキーワードとするネガティブな切り口での営業は慎むよう求めたのである。しかし、これが職制を通じ現場に伝わる頃には、「営業行為すべてを自粛せよ」との指示があったと変質してしまった。このため顧客へのアピール機会を逸したとして、営業現場の不満が高まった。さらには後日、エネルギー政策をめぐる政府審議会でも、この自粛対応が取り沙汰されるなど、大変不本意な思いをした。このことは関係者に自分の考えを正確に伝えることの難しさ、そして誤解が時に重大な事態を招き得ることを痛切に思い知る機会となった。

正しく伝えるためのポイントは、(1)わかりやすいメッセージにする(2)同じことを倦まず弛まず繰り返す(3)できるだけ直接語りかける――の3点である。私は、当社の社員が共有すべき理念を(1)安心・安全・信頼(2)世のため・人のため・国のため(3)誇り・自信・責任感――というシンプルなメッセージにして、会議や面談などあらゆる機会に繰り返して伝え、浸透を図ってきた。ブレることのない信念でなければ、繰り返すことはできない。従業員から信頼を得て、理念を行動に移してもらうには、ブレないことが重要である。

■ 現場との直接対話で学んだこと

私は社長時代「現場を語ろう」というプロジェクトを立ち上げた。私が1人で当社グループの事業所を訪れ、現場のチームリーダー10人程度と懇談することを重ねてきた。「神は現場に宿る」を合言葉に掲げ、議事録・懇談内容を上司に質すこともなし、一升瓶を携え、延べ約700人と語り合った。少なくともこの人たちには私の思いを直接伝えることができた。私も、公式に上がってくる一見もっともらしい報告も実はどうなのかな、といった「目利きの力」を磨くことができた。また、経理やメンテナンス、コールセンターなど、地味で目立たない職場への目配りが大事だということも痛感させられた。人は自分の仕事が評価されていないと感じるとモチベーションが下がり、ひいては事故やクレームにもつながりかねない。特に顧客の苦情を最前線で受けるコールセンターでの懇談は非常に役に立ったため、当社幹部に必ず現地に足を運ぶよう指示をした。こうした取り組みを通じ、幹部ほど現場を重視すべきというモーメントの醸成につなげられたと思っている。

また、現場との対話のなかで、聞く力を高めることの大事さも学んだ。相手の本音をしっかり聞くためのポイントとしては、(1)相手の土俵、すなわち話し手が緊張・萎縮せずに自由に話せる場に出向くこと、あるいはそのような雰囲気をつくること(2)あいづちや質問、コメントなど、話し手に対して適切に反応を示しながら謙虚に聞くこと(3)ほめること――が挙げられる。そして、部下に対して使わないほうがよい言葉として、「それは言ってあったろう」「そんなこと、聞いていない」を挙げておく。いまさら言っても始まらない、意味のないことは言わず、冷静に直面する事態を判断して対処していくしかないのである。

【経団連事業サービス】

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