経団連の女性の活躍推進委員会企画部会(中川順子部会長)は9月28日、東京・大手町の経団連会館で会合を開催し、三井物産ロジスティクス・パートナーズの川島高之社長から「女性活躍・イクボス・イクメンの3点セットが日本を変える―イクボスで業績と社員の笑顔が共にアップ」と題した講演を聞くとともに、少人数に分かれて意見交換した。講演の概要は次のとおり。
成熟期を迎えた日本では、若手社員を中心に男性の家事・育児に抵抗がなくなりつつある。また、仕事以外に地域活動や社会貢献活動、勉強や趣味の時間を持つ者も少なくない。さらに、今後は管理職層も親の介護や自身の傷病等が増え、働く時間や場所に制約がある労働者が7割に上るといわれている。このような背景を経営者や上司が理解せず、これまでの固定観念を社員に押しつけることでワーク・ライフ・バランス(WLB)や女性の活躍推進、男性の家庭・地域活躍の妨げとなり、社員の意欲減退、出産や介護による離職者の増加、ひいては組織の競争力低下を招いている。
いまこそ経営者は“イクボス”を福利厚生としてではなく経営戦略として導入すべきである。イクボスとは、部下の私生活と将来のキャリアを理解し応援しつつ、自分自身もWLBを満喫し、組織の長として職責を全うし、業績への責任を強く持つ者を指す。イクボスが率いる組織は、上司も部下も仕事以外の時間を通じて視野や人脈が広がり、効率的かつ主体的な働き方が身につき、仕事能力が向上する。よって、おのずとやる気が高まり、チームワークが向上し組織力も向上する。これにより、企業のリスク(社員の労災、隠蔽や不正行為、事故、離職等)も軽減する。上司のイクボス度の上昇にあわせて、組織のWLB度と部下の幸福度も上昇し、業績もこれに比例して拡大する。
イクボスの心得として重要なことは、まずは部下と双方向の関係をつくり、自分の情報を開示し、部下の私生活を知ること、それぞれの部下の私生活の充実を推奨し、WLBを「自分事」ととらえさせて、チーム内で「お互いさま」の意識を醸成する。また、仕事のゴールを定めたら細かい管理や指示をせず部下を信じ任せること、そして部下の時間を奪わないことも重要である。例えば出張や外出時に必要のない部下を帯同していないか、あいまいな指示や日々の雑務で作業を増やしていないか等、過去の慣習や業務を見直し、不要なものをやめる判断も必要である。また、イクボス組織の構築にはチーム全員が生産性向上を念頭に3つの時間泥棒(「何も決まらない会議」「やりとりがダラダラと続くメール」「やり過ぎな社内資料作成」)を見直したい。
WLBは与えられるものではなく取りにいくものであり、できない理由を挙げるのではなく、できる手段を考えること、覚悟を決めてあきらめずにやり抜くことで会社を変えていくことができる。
【政治・社会本部】