経団連は9月1日、東京・大手町の経団連会館で情報通信委員会高度情報通信人材育成部会(重木昭信部会長)を開催し、文部科学省生涯学習政策局の磯寿生情報教育課長、高等教育局の北山浩士専門教育課長、研究振興局の榎本剛参事官から、IT人材育成に関する文部科学省の施策を聞くとともに、意見交換を行った。
あわせて東京大学大学院情報理工学系研究科の國吉康夫教授から、経団連と覚書を締結して進めているソーシャルICTグローバル・クリエイティブリーダー育成プログラム(GCL)の進捗状況を聞いた。説明の概要は次のとおり。
■ 教育の情報化の動向
ICT化が進む社会への対応として、教育の情報化にかかるさまざまな実証事業に取り組んでいる。教育の情報化は、情報活用能力の育成のみならず、教科指導におけるICTの活用や校務の情報化という側面がある。次期学習指導要領では、「アクティブ・ラーニング」の取り組みを充実させ、情報科目の新科目としてICTを問題の発見と解決に活用するための科学的な考え方の育成に向けた共通必履修科目の新設の検討など、情報活用能力を高める施策を進めていく。
■ 実践教育ネットワークを通じた人材育成
「情報技術人材育成のための実践教育ネットワーク形成事業」において、産学の教育ネットワークを形成し、課題解決型学習等により人材を育成する取り組み(enPiT)を進めている。現在は、修士課程1年生を主な対象に、(1)クラウドコンピューティング(2)セキュリティ(3)ビジネスアプリケーション(4)組み込みシステム――の4分野で事業を進めている。今後は、学部生も対象として、AI・ロボティクス分野への拡大を検討しており、情報技術を高度に活用して社会の具体的な課題を解決することができる人材の育成を進めていきたい。
■ 新領域開拓に向けた研究開発と研究者支援
現在、人工知能、ビッグデータ・IoT(Internet of Things)、サイバーセキュリティといった新たな分野を統合して研究する「AIPセンター」という拠点を形成し、研究開発と同時に人材を育成する事業を検討している。「新領域開拓者支援」により、拠点と連携しながら研究者を支援していきたい。わが国のデータサイエンティストの層は、業界代表レベルと独り立ちレベルの間に位置する「棟梁レベル」が不足している。実務経験のある社会人の育成などによって、棟梁レベルを年間500人程度育成する必要がある。
■ 東大GCL
GCLとは、先端ICTを活用して社会イノベーションを先導するトップリーダーの育成を目指して、2012年度に開始したプログラムである。同プログラムの学生は異なる専攻の学生との議論を重ねながら活動し、ベンチャー企業を立ち上げるなど、さまざまな成果を挙げている。プロジェクトを成功させるために、産学官共同での社会実装とキャリアパス形成が必要になる。今後とも産業界に協力いただきたい。
【産業技術本部】