経団連は9月8日、東京・大手町の経団連会館で行政改革推進委員会規制改革推進部会(竹村信昭部会長)を開催した。東京大学社会科学研究所の松村敏弘教授から「規制改革の課題と今後の方向性」について説明を聞いた。
概要は次のとおり。
1.政権の取り組みの評価
安倍政権は強いリーダーシップを発揮し、健康・医療、農業、エネルギー等の岩盤規制に風穴を開けた。しかし、現実には既得権益を守ろうとする圧力団体が穴を修復して政策を歪める可能性が残るため、改革を成長につなげるまで継続的に取り組む必要がある。また、岩盤規制改革にあたっては圧力団体のさらなる自律的な取り組みを促すことが望ましい。今般の農協改革により、規制改革に聖域はないと示したことには大きな意味がある。
2.重要課題と今後の方向性
規制改革の分野ごとの重要課題の例として以下が挙げられる。1つ目は医療制度改革を中心とした社会保障改革である。国民皆保険・公的保険のもとでは市場メカニズムが自然には働かない。医師の裁量の問題に正面から抵触するおそれもあるが、予防医療を公的保険の対象とすることや慢性疾患を一部外すことを含め、どの範囲までを保険でカバーするか再検討したうえで、制度をつくり込んでいく必要がある。
2つ目は既存ストックの有効活用に向けた改革である。例えば、個人が保有する別荘を有償で貸す場合、旅館業法の規制対象になるとともに、宿泊施設と見なされて自治体から立地の制限を受ける可能性もある。複数の省庁・機関にまたがる総合的な規制改革の際には、規制改革会議が重要な役割を果たすため、積極的に取り組んでいきたい。
3つ目は地方分権である。地方への権限委譲が進んだ結果、理美容における洗髪設備の設置義務や、食品衛生法における過度な衛生基準の設定など、合理的でない規制を設ける自治体があり、裁量が強すぎることで弊害が起きている。地方分権の本来の目的は中央と地方の役割分担の改革であることから、地方に任せるべきでない規制は中央が定めることも必要である。
また、規制改革を一層推進するために重要な取り組みとして2つ考えられる。1つ目は公務員制度改革である。政治主導で、省益の維持よりも改革への取り組みが評価される制度に改めることが必要である。2つ目は政治的なリーダーシップへの評価である。規制改革を担当する大臣や政務三役が成果に応じて適切に評価され、その後要職に就くようになれば、おのずと規制改革の好循環をつくることができる。
【産業政策本部】