■ インターネットの新地平
インターネットは、タブレットPCやスマートフォンなどのモバイルインターネットとして急速な普及拡大を遂げ、いまや体温・血圧・脈拍などの生体信号を取得・活用できるスマートウォッチ、視覚でとらえる現実世界に情報が上書きされるスマートメガネといったウェアラブルへと展開している。モバイルインターネットやウェアラブルは、いずれも日本が最初に生み出した発想・技術であるが、現時点ではグーグルやアップルが実用化で先行しているのが残念なところである。
さらにウェアラブルから、血糖値測定で糖尿病の病状管理が常時できるスマートコンタクトレンズや人工網膜などのインプランタブル(埋め込み型)へと変化し、身体健常者の機能を補強するだけでなく例えば脊髄損傷を補完するなど身体障害の機能回復にも有効である。これらは、脳から機械や筋肉へ直接指令を出す神経系統との結合に進み、最終的には、人間の身体・臓器を機械に置き換えるサイボーグ化を現実のものとすることになると思われる。
■ スマートグリッドが切り拓くIoTの世界
また、電力網と情報網とを束ねたスマートグリッドのもとでは、現在、電力網に接続している電機機器はすべてインターネットに接続可能となる。この結果、スマートハウス、スマートメーター、スマートカーなどが登場し、インターネットの従来機能であるメールやSNSといった人と人とのコミュニケーションに加え、人と物、物と物とのコミュニケーションというIoT(Internet of Things)の世界が出現し、“無限台”のスマート◯◯が、スマートグリッド端末としてつながっていくことになる。
IoTは、消費電力の見える化に始まり、ディマンド・レスポンス(電気の需要側も対応する蓄電・売買電システム)、スマート◯◯の使用状況のモニタリングによる高齢者の見守り機能などが段階的に実用化されてくるが、新たな段階を迎えるには、ビッグ・データの解析技術の進展が不可欠である。顧客を年齢・性別・年収・購買履歴等の属性情報の分析という段階(ビッグ・データ1.0)から、行動履歴・生活パターン・SNSのコメントなどを解析して、意味そのものを理解する段階(ビッグ・データ2.0)へと進み、その解析手法は人間の神経細胞のようにつながり解析を行うニューラルネットワークへ、さらには人工知能(AI)へと進化していく。
米国では、DARPA(国防高等研究計画局)、OSTP(ホワイトハウス科学技術政策局)などの政府機関、グーグルとNASAの共同研究所設立など、官民が連携し巨費を投じて人工知能(AI)を使ったビッグ・データ関連の最新技術の研究開発に取り組んでいるが、日本も後れを取らずに研究開発に邁進してほしい。
※本稿は「経団連昼食講演会」(6月8日)の講演を要約したものです。
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