経団連は4日、東京・大手町の経団連会館で日本トルコ経済委員会(釡和明委員長、山西健一郎委員長)を開催した。外務省の上村司中東アフリカ局長、向賢一郎中東第一課長、経済産業省の伊藤伸彰通商政策局審議官(通商戦略担当)を招き、6月にトルコで実施された議会総選挙を受けた内政の動向や近隣諸国等との関係、4月に行われた日本トルコ経済連携協定(EPA)第2回交渉会合の結果等について説明を聞き、意見交換を行った。説明概要は次のとおり。
■ 総選挙後のトルコの内政と近隣諸国等との関係
6月7日に行われた総選挙の結果、ダーヴトオール首相率いる与党・公正発展党(AKP)の得票率は事前の予想を大きく下回り、2002年の政権獲得以来、初めての過半数割れとなった。AKPは現在、他党との連立政権樹立に向け、交渉を進めているが、主な敗因は、本来中立であるべきエルドアン大統領の選挙プロセスへの介入に対する反発等により、野党に票が流れ、クルド系の政党が大きく躍進したことにある。
トルコ共和国憲法の規定により、議会運営委員会選出後45日が経過した8月23日までに組閣されない場合、大統領は再選挙を行うことができる。AKPが野党と連立を組むか、再選挙となるかが最大の注目点となる。再選挙を行った場合の結果が見通せないなか、エルドアン大統領としては、再選挙によってAKPが絶対過半数を取れるか否か、8月23日まで、慎重に票読みするのではないか(※8月25日、トルコ選挙管理委員会より11月1日に再選挙が実施される旨発表された)。
一方、近隣諸国等との関係に目を転じると、トルコはこれまで、シリア国境付近で活動しているISIL(イラクとレバントのイスラム国)への直接攻撃に消極的な姿勢を取ってきたが、7月下旬に方針を転換し、ISILへの空爆を実施するとともに北イラクに潜伏するクルド系非合法組織への空爆を再開した。こうした姿勢の変化の背景には、総選挙でのクルド系政党躍進を踏まえ、あり得べき再選挙に向けたエルドアン大統領の思惑があるとの見方も有力である。クルド勢力に対して強硬な姿勢に転じることで、クルド勢力分裂を図り、総選挙で失ったAKP支持の回復をねらっていると目されているが、ISIL等への対決姿勢を鮮明にしたことで、近隣諸国との緊張関係やトルコ国内での治安リスクが高まっていることも事実である。
■ 日本トルコEPA第2回交渉会合の結果
日本トルコEPA第2回交渉会合は、今年4月13日から17日にトルコのアンカラで開催された。昨年12月に東京で開催された第1回会合で合意した総論を踏まえ、第2回会合では、物品市場アクセス、投資、知的財産、ビジネス環境整備、政府調達等の分野において意見交換を行った。とりわけ物品市場アクセスについては、双方の関心について専門家会合で議論を行った。第3回交渉会合は今秋、東京で開催すべく日程を調整中であり、今後、双方の関心を取り入れながらも、包括的でレベルの高いEPA締結を目指して精力的に交渉していきたい。
【国際経済本部】