経団連は5月22日、東京・大手町の経団連会館で教育問題委員会企画部会(三宅龍哉部会長)を開催した。文部科学省生涯学習政策局参事官の大谷圭介氏から、現在、政府で検討されている実践的な職業教育を行う新たな高等教育機関の制度化等について説明を聞き、懇談した。
■ 実践的な職業教育を行う新たな高等教育機関とは
大谷氏はまず、「2014年7月に公表された教育再生実行会議の第5次提言において、社会経済の変化に伴う人材需要に即応した質の高い職業人の育成、専門高校卒業者の進学機会や社会人の学び直しの機会の拡大といった観点から、現行の大学・短期大学・高等専門学校・専修学校とは異なる、新たな高等教育機関の制度化が提言された」ことを紹介。これを受けて、「実践的な職業教育を行う新たな高等教育機関の制度化に関する有識者会議」が発足したと検討の経緯を述べた。
また、同有識者会議が今年3月に公表した審議まとめでは、「新たな高等教育機関は、主たる目的を『質の高い専門職業人養成のための教育』とし、大学体系に位置づけて学位授与機関とする。産業界と連携しつつ、どのような職業人にも必要な基本的知識・能力とともに、実務経験に基づく最新の専門的・実践的な知識や技術の教育を行う」ことが提言されたと説明。
さらに、新たな高等教育機関は、(1)実習・実技、演習、実験等を重視し、PBL(Project-Based Learning、課題解決型学習)やインターンシップを積極的に取り入れる(2)入学者は高等学校等の新卒者と社会人の両方を想定(3)修業年限は2~4年とする(短期履修により社会人の学び直しに対応する)(4)教員は教育上の指導能力を最も重要視したうえで、企業等と兼任する教員も一定条件のもとで必要教員数に算入できる仕組み――とすると語った。
<意見交換>
続いて行われた意見交換では、「なぜ大学体系に組み入れて学位の授与を行う必要があるのか」という経団連側からの問いに対し、大谷氏は「学位は大学が所定の課程を修了した者に対して出すことができるものであり、国際的な通用性がある。例えば韓国にはファッションや美容の大学があるため、アジア出身者には、それらの学位を韓国で取得し、技術は日本で学ぶという人もいる。TPP(環太平洋経済連携協定)等で国際的に人材が流動化する時代に対応できるようにしておく必要がある」と強調した。
また、「研究開発等で企業が大学とすでにさまざまな連携を進めているなかで、新たな高等教育機関と企業との連携はどう異なるのか。また、どのような産業に、新たな高等教育機関へのニーズがあるのか」との問いに対しては、「大学と企業の共同研究といった高いレベルの連携とは異なり、例えば『ものつくり大学』のような、手に職をつけるタイプの教育機関における企業との連携を考えている。有望な分野としては、観光、福祉、ITなどを想定している」との説明があった。
【教育・スポーツ推進本部】