地域経済の持続的な発展のためには、特色ある新たな産業、ベンチャー創出の促進がカギを握る――。
経団連の起業創造委員会(荻田伍委員長、根岸修史共同委員長)ではこうした認識のもと、昨年12月にワーキンググループを立ち上げ、大企業とベンチャー企業の連携強化策を中心に議論を深めている。その一環として10日、根岸共同委員長を団長に、近年高い起業率を示している宮城県仙台市を視察し、現地のベンチャー企業や経済団体、行政関係者等と懇談した。
当日はまず、東北大学連携ビジネスインキュベーター(T-Biz)を訪問。マッチング機能など、同施設を利用して事業を推進しているTESS(足こぎ車椅子)、マテリアル・コンセプト(太陽電池セルに活用する銅ペースト)、東北マイクロテック(三次元LSI)の3社からそれぞれ説明を聞いた。各社からは、「大企業と連携しようとする際、納入実績や品質管理等で大企業と同じ基準を求められることが多く、連携の阻害要因となっている。お互いに相手を尊重する姿勢が大事」との指摘があった。
続いて、東経連ビジネスセンター(東経連BC)との懇談会を開催。根岸共同委員長は、今回の懇談の主旨について「自治体、地域の経済界、ベンチャー企業など、さまざまな取り組みを進めている関係者が広く連携し、情報を発信していくことで、個々の取り組みに厚みを持たせていくことが大事。今回の懇談会をその契機にしたい」とあいさつ。続いて、宇部文雄・東経連BC会長から、「東北経済連合会では、20年もの間、東北のベンチャー企業に対し、個別の支援活動を展開してきている。東経連BCとしては、実践的な活動とあわせて提言活動もしており、本日が大企業と東北ベンチャーとの連携のきっかけとなってほしい」との期待の表明があった。
また、東経連BCの支援を受けている、ピー・ソフトハウス(ゲームソフトウェアの開発等)、アンデックス(WEBシステム開発等)、フォトニックラティス(光学フィルタの高集積化)から、各社の事業概要の説明とともに、「大企業とベンチャー企業の連携を強化するためには、その仲介役となるコーディネーターの役割が重要」など、大企業との連携に関する意見を聞いた。
その後、伊藤敬幹・仙台市副市長、梶原康之・復興庁宮城復興局長を表敬訪問し、仙台市における起業促進に向けた取り組み、および宮城県の産業の復旧・復興の現状・課題等について説明を聞いた。
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起業創造委員会では、大企業とベンチャー企業の連携強化策等に関する報告書の取りまとめに向けて、地方視察の第2回として、5月19日に福岡市を訪問する。
【産業政策本部】