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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2015年4月23日 No.3221 ガスパルIMF財政局長の講演会を開催 -ゼロ金利制約下での財政・金融政策の相互作用をテーマに

講演するガスパルIMF財政局長

経団連は6日、東京・大手町の経団連会館で、ヴィトル・ガスパルIMF(国際通貨基金)財政局長の講演会を開催した。石原邦夫副会長・財政制度委員長の司会進行のもと、ガスパル局長から、「ゼロ金利制約下での財政・金融政策の相互作用」をテーマに説明を聞くとともに、意見交換を行った。講演会の概要は次のとおり。

■ 非伝統的な金融政策のもとでの需要ショックの伝播

日本は2014年第4四半期、15年第1四半期ともに、堅調に景気が上向いている。しかし、低インフレと低成長というリスクは現在も消えていない。

こうした状況において、物価を押し下げる需要ショックに対して、経済はどのように反応するのだろうか。まず、ゼロ金利制約がない場合は、中央銀行は短期金利を下げ、インフレ期待を醸成することで将来の実質金利を押し下げる。これが為替の減価につながり、需要は回復する。しかし、ゼロ金利制約がある場合は、それ以上短期金利を下げることができないため、インフレ期待が醸成されず、将来の実質金利が上昇することで為替の増価につながり、需要を一層下げる効果をもたらす。ゼロ金利制約下では、為替レートは需要ショックを増幅させてしまう。

現在日本では非伝統的な金融政策が取られているが、物価が下がる需要ショックの経済への伝達メカニズムは予測しにくい。このため、弾力的な財政政策による補完が必要となる場合がある。

■ 財政フレームワークの構築が重要

しかし、中期的に財政再建を実現していくためには、財政上のリスクを管理し、債務水準のアンカーとなる財政フレームワークを構築することが不可欠である。こうしたフレームワークは、経済変動に対する安定性と強靭性の確保につながる。今夏に日本政府は中期財政健全化計画を策定する予定であり、その中身に期待したい。

金融政策や財政政策とともに、競争力や潜在成長力を高める政策が着実に実施されなければならない。これにより債務残高の対GDP比の低下が実現されるだろう。

◇◇◇

講演後、参加者から、「人口の減少トレンドからの脱却に関してアドバイスをうかがいたい」「労働力人口が減少するなか、優秀な女性が労働参加することは極めて重要。しかし、国によっては雇用が増えないと、そうした女性の労働参加に対する理解が得られないのではないか」等の意見があった。

これに対しガスパル局長から、「人口減少のトレンドから脱却し、人口増に転じたスウェーデンやフランスの例もある。これらの国の少子化対策から学ぶべきことがある。また、少子高齢化が進展するなか、適切な金融政策と財政政策に加え、サービス分野も対象とした規制緩和、正規・非正規労働者の分極化の改善、金融セクターの効率化等が重要である」「女性の労働参加が生産性向上に与えるプラスの影響を確信している。軋轢があっても、女性の労働参加を推進していくべきだ」との回答があった。

【経済政策本部】

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