石油業界は、エネルギー転換部門として、産業活動や国民生活の基礎物資である石油製品を、気候や景気等により変動する需要にあわせ「安定的に供給する」重要な責務を担っている。そこで、低炭素社会実行計画では、石油資源の高度利用かつ有効利用に取り組むことにより、エネルギー基本計画に示された安定供給などを柱とする三つのE(注1)の達成を通じて、低炭素社会の形成を目指していく。
(1)石油製品の製造段階の取り組み
製油所では主に既存装置に対し、(1)最適な技術の選定(2)装置の使用実態にあわせた技術のカスタマイズ――という地道な取り組みの積み重ねにより、エネルギー効率の向上に努めている。また、長年にわたる省エネ努力を行ってきており、製油所単独での取り組みには限界があるため、他の事業所との連携による効率化の取り組みにも着手している(図表1参照)。こうしたたゆまぬ努力の結果、わが国の製油所は世界最高水準のエネルギー効率を達成している。
低炭素社会実行計画では、エネルギー効率のさらなる維持・向上を目指して、省エネ対策によるエネルギー削減量を目標に掲げた。具体的には、2010年度以降の省エネ対策により、2020年度において原油換算53万キロリットル、2030年度において原油換算100万キロリットルのエネルギー削減量の達成に取り組んでいく(石油需要の減少等による製油所数の減少や生産プロセスの大幅な変更など、業界の現況が大きく変化した場合には目標の再検討を視野に入れることとする。また、2015年以降、約5年ごとに目標水準の評価を行う)(注2、注3)。
(2)石油製品の輸送・供給段階の取り組み
石油業界は、年間約1.9億キロリットルもの石油製品を、全国をカバーするサプライチェーンを通じて、工場や給油所に配送している。そこで、物流拠点である油槽所の共同利用、配送手段である内航船やタンクローリーの大型化等により、輸送効率の向上に引き続き取り組んでいく。
(3)石油製品の消費段階の取り組み
石油業界は、消費者に石油製品を効率的に使用してもらうための取り組みについても積極性に推進している。
例えば東日本大震災の経験から、蓄電池を搭載し、灯油を燃料とする高効率石油給湯器をメーカーと協力して開発した(図表2参照)。本機器は従来型に比べ熱効率が向上しているだけでなく、通常の給湯器の運転に不可欠な電力供給が災害等で停止しても、水道が利用可能であればタンク内の灯油と蓄電池で給湯器を使用することが可能である。環境対策と緊急時対策の両面に貢献できる製品として、普及に取り組んでいく。
(4)革新的技術開発と国際貢献の推進
わが国は石油のほとんどを海外からの輸入に依存していることから、超重質原油や非在来型原油などの供給が増加する世界的な流れを受け、これら原油から効率的に輸送用燃料や石油化学製品などを生産する技術開発に引き続き取り組んでいく。
また、わが国に蓄積した環境負荷低減や石油資源の効率的利用に関する知識・経験・技術が、今後石油消費が増加する海外諸国で活用されるよう、研修生の受け入れや専門家派遣などの人的支援、技術交流などを推進していく。こうした活動は、資源国との密接な関係構築を通じてわが国のエネルギー安定供給確保にも結びつく重要な取り組みと考えている。
(注1)三つのE=安全性を前提としたうえでの、エネルギー安定供給(Energy security)、経済効率性の向上(Economic Efficiency)、環境への適合(Environment)
(注2)目標達成には政府の支援措置が必要な対策を含む
(注3)個々の省エネ対策箇所について、稼働実績を反映したBAU(追加的対策がない場合)からのエネルギー削減量を把握し、これを業界全体で積み上げ、目標達成を判断する
(石油連盟)
【環境本部】