経団連のアメリカ委員会(石原邦夫委員長)は5日、21世紀政策研究所「日米関係プロジェクト」研究主幹を務める久保文明・東京大学大学院法学政治学研究科教授から、米国における日本のプレゼンス向上に向けた課題や日米関係の現状等について説明を聞き、意見交換した。久保教授の説明概要は次のとおり。
■ プレゼンス回復に向けた対策
日本経済の低迷や人口減、政権の発信力の弱さ、米国への留学生減少などにより、米国における日本のプレゼンスは、中国や韓国と比較して低下している。プレゼンス向上のためには、日本全体として、米国政治の中心であるワシントンDCで、何をすべきか考える必要がある。例えば、米国は東日本大震災後、復興支援等、さまざまな支援をわが国に対して行ってきた。これに対する感謝の表明を兼ねて、日米関係強化を使命とする基金ないしシンクタンクを米国への贈与としてワシントンDCに設立することも一案である。
加えて、対日理解促進に向けて、NHK英語放送の3チャンネル化(現在は一つのみ)も考えられる。(1)ニュース、時事問題(2)伝統文化、観光、日本語教育(3)ドラマや映画等――の3チャンネルを設けて、日本の魅力を幅広く発信してはどうか。
■ 日米関係の課題
昨年4月のオバマ大統領来日の際の発言等をみて、安全保障の分野などで日米の絆が強まっていることが感じられる。しかし、米国政府高官の間で、対日理解を増進する必要があるのも事実である。
TPP(環太平洋経済連携協定)については、昨年の中間選挙で上下両院において多数党となった共和党にプロ自由貿易の議員が多いことから、妥結の可能性はあると考えている。
大統領選については、今後の米国経済の動向がカギとなろう。ヒラリー・クリントン元上院議員が有力とされるが、同一政党が3回連続で大統領選に勝利したのはまれであることも事実である。
【国際経済本部】