循環型産業である製紙業界の地球温暖化対策は、省エネとともに燃料転換によるCO2削減と、植林による吸収源造成目標を併せ持つ点で、ユニークなものである。今後は、さらに、主体間の連携の強化、国際貢献、革新的技術の開発等にも前向きに取り組んでいく。
(1)CO2削減目標
燃料転換が地球温暖化対策として有効なものと位置づけられたのは、2002年以降であった。バイオマスボイラーの導入により、化石エネルギーから廃棄物エネルギー、再生可能エネルギーへの転換が図られるようになり、省エネによるコストダウンに加えて、大きな成果を得ることができた。このため、低炭素社会実行計画のフェーズⅠ、フェーズⅡともに(1)一般的な省エネルギー(2)バイオマスや廃棄物の利用による燃料転換(3)高温高圧回収ボイラーへの更新――の3本柱を想定している。
(2)吸収源造成目標
製紙業界は、製紙原料の安定的な確保のみならず、CO2吸収源としての地球温暖化防止を図る観点から、2020年度までに所有または管理する国内外の植林地の面積を1990年度比で42.5万ヘクタール増の70万ヘクタールに、2030年度までに同52.5万ヘクタール増の80万ヘクタールとすることを目標とする。その実施にあたっては、当該植林適地のCO2吸収量の増大を図るため、持続可能な森林経営を積極的に推進することとしている。
(3)主体間の連携の強化
フェーズⅠにおいては、紙製品の強度を維持しながら軽量化を進めることで、紙資源の節約と製品輸送工程でのCO2削減に貢献することになる。フェーズⅡにおいては、次世代素材のセルロースナノファイバーを自動車や家電製品等の部材に利用することで軽量化や消費エネルギーの削減効果が期待され、使用段階でのCO2削減に寄与することから、産官学のコンソーシアム「ナノセルロースフォーラム」を中心として垂直連携により実用化を加速することとしている。
(4)国際貢献の推進
1990年度以降本格化した海外植林を今後とも積極的に進めていくこととしている。フェーズⅡにおいては、日本の用紙軽量化技術が海外に普及するならば、製品輸送段階ばかりでなく原料輸送段階においてもCO2削減に貢献することとなる。
(5)革新的技術の開発
フェーズⅠにおいては、廃材、廃棄物等利用技術として林地残材の合理的な集荷システムを確立する。フェーズⅡにおいては、木質系バイオマスからバイオエタノール等の液体燃料やガス化してエネルギー変換効率を向上させる技術やセルロースナノファイバー、バイオ化学品を製造する技術について検討していく。
低炭素社会実行計画は、著しい環境の変化が起きた場合には目標内容の見直しを行う。フェーズⅠにおいては、固定価格買取制度(FIT)によるバイオマス燃料の調達状況への影響を見極め、2016年ごろにレビューを行う予定であり、フェーズⅡにおいても、同様に随時実行計画を見直すこととしている。
(日本製紙連合会)
【環境本部】