経団連は18日、「宇宙基本計画に向けた提言」を公表した。
政府は、今年9月から新たな宇宙基本計画の策定に向けた検討を開始し、現在、同計画の素案についてパブリックコメント手続きを実施している。そこで経団連として、新宇宙基本計画のあり方や計画に盛り込むべき衛星やロケットのプログラムなどに関する経済界の考え方を示した。概要は次のとおり。
■ 「中間取りまとめ」に対する評価
今年8月に政府の有識者会議である宇宙政策委員会基本政策部会が「中間取りまとめ」を公表。安全保障政策と宇宙政策の連携を強化し、宇宙産業基盤の維持・強化に資するかたちで、宇宙開発利用の基本方針を再構築する必要性が指摘された。新計画の基礎となる「中間取りまとめ」の宇宙インフラおよび宇宙利用ニーズに関する各分野の施策について、経団連の主張と方向性が同じであり評価する。
■ 新たな宇宙基本計画のあり方
宇宙政策の重要課題として、第一に安全保障の強化のため、安全保障と民生分野の連携や日米宇宙協力を推進すべきである。第二に宇宙産業の振興のため、企業の投資に資する長期整備計画の策定や宇宙活動法制の整備が必要である。第三に、科学技術力の強化のため、基礎研究とともに応用・実用研究を推進すべきである。
政府の推進体制については、宇宙開発戦略本部による総合的な政策の推進に向け、司令塔機能の発揮や人員の増強による体制の整備などが求められる。また、宇宙航空研究開発機構(JAXA)は防衛省との連携強化や産業振興に向けた技術的支援を行うべきである。
今後10年間の工程表を策定するにあたり、分野別の衛星等の打ち上げや法制整備の時期、事業規模、官民連携の進め方などを明記すべきである。まず、2020年の東京オリンピック・パラリンピックを目標として、わが国のプレゼンスを世界に示せる宇宙開発利用を実現すべきである。このため、今後5年程度で衛星の打ち上げ数を官民合計で年間7~10機程度に、事業規模を現在の3000億円から5000億円に増加させることが求められる。このうち民間は、年間1~2機程度の打ち上げ数、5000億円のうち1割程度の事業規模を目指す。各分野における具体的取り組みは下表のとおり。
分野 | 具体的取り組み |
安全保障 | 情報収集衛星の10機体制への強化、早期警戒システムの整備、宇宙状況監視や海洋状況把握システムの構築、宇宙ゴミを除去する技術開発 |
測位 | 準天頂衛星の7機体制の2020年代初頭の実現、安全保障分野への活用 |
観測 | 気象衛星、陸域観測衛星、環境観測衛星の継続的な開発 |
通信・放送 | 高度情報衛星通信の技術開発、光データ中継衛星の開発 |
エネルギー | 宇宙太陽光発電システムの研究開発や実証実験 |
有人宇宙活動 | 宇宙ステーション補給機の機能向上や日本実験棟の活用促進 |
宇宙科学 | 宇宙科学ミッションの継続的な実施 |
輸送 | H-IIAとH-IIBの安定的な運用と次期基幹ロケットの開発、イプシロンロケットの継続的な打ち上げ、射場の整備 |
※全文は http://www.keidanren.or.jp/policy/2014/098.html 参照
【産業技術本部】